オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)は4月10日、同大学の研究者らが制御された無秩序を意図的に導入することで、単一デバイスで複数の光学機能を同時に実現する新たな設計手法を示したと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。
本研究は、ナノ構造を規則的に配置する従来の光デバイス設計とは異なり、不規則で複雑な構造、すなわち「カオス」を設計要素として積極的に活用する点に特徴がある。研究チームは、無秩序に配置されたモザイク状のナノ構造からなるメタサーフェスを新たなクラスの材料として開発し、単一デバイスで複数の光学機能を同時に実現できることを示した。さらに、無秩序を適切に設計することで性能が向上し、限られた空間により多くの機能を高密度に集積できる可能性が示された。
この手法により、各機能に必要な領域を大幅に縮小し、同一デバイス上で複数機能を共存させることが可能となる。実証として、広い波長域にわたり安定して集光する光学レンズを開発し、単一の表面に11の異なる光学機能を統合することで、通常は大型で複雑な光学系を必要とする色収差を抑えつつ、異なる色の光を一貫して集光できることを示した。さらに、光の偏光状態や構造化光場の情報を一度の測定で取得できるイメージング機能も実現した。
本研究は、同大学物理・天文学部のチー・リー(Chi Li)博士や同部ナノメタグループのハオラン・レン(Haoran Ren)博士らによって行われた。リー博士は「従来設計では1つの機能が空間を占有していましたが、本研究では設計を見直し、複数機能が干渉せず共存できるようにしました」と述べ、「コンパクトで多機能な光デバイス実現への重要な一歩です」と強調した。また、レン博士は「無秩序は通常排除されるものですが、適切に設計すればデバイス性能を高めることができます」と述べ、「限られた空間により多くの機能を組み込むことが可能になります」と説明した。
本研究は同大学のナノフォトニクス研究施設で実験的に実施され、英国エクセター大学や南アフリカのウィットウォーターズランド大学の研究者も参加した。この成果は、無秩序が秩序を上回る可能性を示した点で、フォトニクスや工学分野の基本的前提に再考を迫るものといえる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部