2026年05月
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窒素肥料の輸入依存や供給、利用効率の課題を解説 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は4月15日、世界の食料生産を支える合成窒素肥料について、豪州がその全量を輸入に依存している現状や、供給網の混乱が農業および食品価格に及ぼす影響、さらに窒素利用効率の向上に向けた研究の方向性を解説した記事を公開した。

記事によると、合成窒素肥料の多くは、ハーバー・ボッシュ法により大気中の窒素と水素からアンモニアを合成して製造される。この技術は世界の穀物生産を支えてきた一方、豪州では肥料は全量が輸入され、穀物は輸出される構造にあり、農業は世界の供給網と強く結びついている。2025年には、窒素肥料輸入の56%が中東由来であり、2011年から20%超増加した。

供給網の混乱は肥料価格の変動を通じて農業や食品価格に影響を及ぼす。記事は、アラブの春、ウクライナ戦争、中東情勢の緊迫化が肥料価格の急騰を招いたと説明する。窒素は植物の成長やタンパク質合成、葉緑素形成に不可欠であるが、毎年農地に投入される合成窒素約100テラグラムのうち、人が消費する食品に取り込まれるのは17テラグラムにとどまり、残りは環境中に流出する。また、農家が肥料に投じる1ドルに対し、農家に戻るのは30~50セント程度である。

CSIROは、植物を単に肥料を受け取る存在ではなく、窒素の利用や保持に主体的に関与する存在として捉える視点を重視している。その上で、窒素投入量そのものではなく、植物による利用の在り方に着目している。

品種によって窒素の吸収や変換の効率に差があるほか、根が窒素を植物が利用可能な形で土壌中に保持する生物的硝化抑制(BNI)と呼ばれる性質を持つことが知られており、これを活用した育種研究が進められている。また、雷の放電に着想を得た低温プラズマを種子に処理し、植物の初期成長段階で窒素を供給する手法も検討されている。記事は、これらの取り組みの組み合わせが、輸入窒素肥料への依存低減に寄与し得ると説明している。

CSIRO農業・食品研究部門副部長、アリソン・ベントレー博士
(出典:CSIRO)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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