オーストラリア国立大学(ANU)は4月22日、同大学の研究を基に設立された半導体技術企業シエンタ(Syenta)社が、次世代人工知能(AI)システムの性能向上につながる技術の商業化を加速するため、3700万ドルの投資を確保したと発表した。

Syenta社共同創設者で最高経営責任者のジェカテリーナ・ヴィクトロワ(Jekaterina Viktorova) 博士(左)と最高技術責任者のベン・ウィルキンソン(Ben Wilkinson)氏(右)
(出典:ANU)
オーストラリア政府の国家再建基金公社(NRFC)とディープテック系ベンチャーキャピタルのプレイグラウンド・グローバル(Playground Global)社は、現代のコンピューティングの大きな制約要因の一つである、半導体チップ間のデータ移動速度の課題に対応するシエンタ社の独自技術に投資した。接続できるチップの数が多く、通信速度が速いほど、システムの性能は高まる。
シエンタ社の技術は、高密度のチップ間接続を可能にし、ミクロンスケールの相互接続で帯域幅と製造効率を改善し、AIシステムや量子コンピューティングの性能と拡張性を高める。同社の局所的な電気化学製造(LEM)技術は、半導体製造に必要な工程数を40%削減し、より迅速で効率的な製造を可能にし、サプライチェーン上の制約緩和にもつながる。
シエンタ社共同創業者でCEOのジェカテリーナ・ヴィクトロワ(Jekaterina Viktorova)博士は、NRFCとの連携により、先駆的な研究開発がオーストラリアの半導体産業の発展に寄与すると述べた。同じく共同創業者でANU化学研究科のルーク・コナル(Luke Connal)教授は、ANU発の研究が急成長企業へ移行し、半導体分野に大きな影響を及ぼし得る事例だと強調した。
NRFCの投資は、特許ポートフォリオの拡充、専用装置の調達、国内での初期生産能力の確立、顧客向け概念実証プログラム、米国拠点の顧客対応チームに充てられる。NRFCのメアリー・マニング(Mary Manning)最高投資責任者(CIO)は、投資はANU発の博士研究の商業化、シエンタ社の知的財産の国内維持、主権的な先進半導体製造能力の確立を支援すると述べた。
NRFCの投資はプレイグラウンド・グローバル社が主導した3700万ドルのシリーズAラウンドの一部で、シエンタ社の累計調達額は5110万ドル超となった。今回の投資に伴い、インテル社元CEOでプレイグラウンド・グローバル社のゼネラルパートナーのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏が取締役会に加わる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部