オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)は5月21日、UNSWとガーバン医学研究所の研究者らが、生きたメラノーマ細胞をマクロファージ免疫細胞が攻撃し、飲み込む様子を初めて撮影したことを発表した。研究成果は学術誌Journal of Experimental Medicineに掲載された。
メラノーマは、オーストラリアで最も多く、致死性も高いがんの一つである。今回の研究は、これまで十分に注目されてこなかったマクロファージの一群が腫瘍の辺縁部を巡回し、がん細胞を着実に飲み込んで腫瘍の成長を遅らせていることを明らかにした。マクロファージはメラノーマ腫瘍内の細胞の最大30%を占め、がんに関与することは知られていたが、腫瘍の成長を助けるのか妨げるのかは明確でなかった。
研究の筆頭著者であるUNSW連携上級講師のユキ・キース(Yuki Keith)博士らのチームは、皮膚内のマクロファージが一様ではないことを見いだし、CD169と呼ばれるタンパク質を発現するCD169陽性マクロファージを特定した。CD169陽性マクロファージを特異的に標的として除去すると腫瘍が大きくなり、この細胞群がメラノーマの成長を抑えていることが示された。研究チームは生体内二光子顕微鏡を用い、マウスの体内でCD169陽性マクロファージが生きたメラノーマ細胞を物理的に飲み込む様子を観察した。ヒト組織の解析でも、同じマクロファージが健康な皮膚に存在し、ヒトのメラノーマ腫瘍の辺縁部に多く集まっていることが確認された。
研究を主導したUNSW連携教授のトリ・ファン(Tri Phan)教授は、この攻撃が、がんと戦う主役として知られるT細胞やB細胞とは独立して起きているように見える点が予想外で重要だと説明した。免疫チェックポイント阻害療法は進行メラノーマ治療を変えたが、反応する患者は約半数にとどまり、T細胞を完全に締め出す、いわゆる免疫の「冷たい腫瘍」も課題である。同博士は、CD169陽性マクロファージががん細胞を取り込み、その一部を表面に提示してT細胞を腫瘍内に呼び込む鍵になる可能性を指摘した。同教授は「このマクロファージ集団を活用できれば、すでに体内に備わっている免疫の部隊を動員できる可能性があります」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部