オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は5月28日、CSIRO量子システムチームと国際的な研究者らが、量子コンピューティングをスマートグリッドの管理に活用する機会と課題を示すロードマップを作成したと発表した。研究成果は学術誌Nature Reviews Electrical Engineeringに掲載された。
現代の電力システムは、再生可能エネルギー、蓄電池、電気自動車(EV)、パワーエレクトロニクス、センサー、リアルタイム制御システムの拡大により、高度にデジタル化されたスマートグリッドへ急速に変化している。2005年には大規模発電所から家庭へ一方向に流れていた電力が、2026年には屋根置き太陽光発電、家庭用蓄電池、EV、電気バス、電動灌漑ポンプ、スマート家電などを介し、供給と需要が分単位で変わる双方向ネットワークになっている。
CSIROの量子科学者であるゼヘン・ワン(Zeheng Wang)博士は、将来のスマートグリッドで最大の制約は電柱や電線ではなく計算能力にあると指摘する。スマートグリッドの運用は、太陽光パネルや蓄電池などを制御するコンバーター層と、グリッド全体で数万の資源を管理するシステム層からなる。量子コンピューティングは、双方で主要なボトルネック解消に役立つ可能性がある。
研究共著者でCSIRO量子チームリーダーのムハマド・ウスマン(Muhammad Usman)教授は、従来型コンピューターでは追いつくことが難しい複雑なグリッドについて、量子コンピューティングにより、より正確なモデル化、より迅速な運用最適化、より安全な監視が可能になり得ると説明した。これは、太陽光や風力の統合、次世代人工知能(AI)データセンター、交通の電動化、産業脱炭素化を支えるグリッドにつながる可能性がある。
ロードマップは、早期に価値をもたらす可能性が高い領域として、一部の最適化問題、データ集約型のグリッド計算、小規模な機械学習、システムセキュリティ向上を挙げた。一方、完全なリアルタイム性が求められる安全上重要な制御用途には限界があるとした。同博士は「量子コンピューティングがエネルギー転換を単独で解決するのではありません。将来に必要な効率的でレジリエンスが高く、安全な電力システムの構築を助ける重要な実現技術になるということです」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部