オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)は6月10日、同大学などの研究者らが、原子を1個ずつ配置し、読み取り可能なQRコードとして世界最小とみられる構造を作製したと発表した。
研究チームは、超精密な走査型トンネル顕微鏡(STM)を用い、銀表面に個々の銀原子を慎重に配置して、50×50nm2のQRコードを構築した。大きさは人間の髪の毛の幅の1000分の1未満で、面積は現在のギネス世界記録保持物の約800分の1だが、携帯電話で読み取ることができる。
本研究は、モナシュ大学物理学・天文学部と、プラハにあるチェコ科学アカデミー物理学研究所(FZU)の共同研究として実施された。主要メンバーには、FZUのオレクサンドル・ステツォヴィチ(Oleksandr Stetsovych)博士、ベンジャミン・ロウ(Benjamin Lowe)博士、モナシュ大学のジュリアン・セディア(Julian Ceddia)博士が含まれる。
STMは、超高真空・極低温下で針状の探針を表面に極めて近づけ、電子が量子トンネル効果で移動できる状態にすることで、原子スケールで物質を観察し、操作できる。ステツォヴィチ博士は、銀原子で覆った探針を銀表面に静かに接触させることで、適切な条件下では望む位置に単一原子を残せると説明する。構築工程の大部分は自動化されたが、QRコードを完全に読み取れるようにするため、ロウ博士らが最後の原子を手作業で微調整した。
この技術は、自然界に存在しない構造を原子1個ずつ作る新材料開発にも使われており、量子材料や次世代コンピューティングの未来を探る技術でもある。ナノQRコードは、走査型プローブ顕微鏡の魅力を伝える国際アウトリーチ活動「SPM Pro Tips」の紹介にも使われる。セディア博士は「これは、顕微鏡が原子スケールでもたらす並外れた制御能力を示す、遊び心のある実証です」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部