オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は6月11日、同機構が地下炭鉱の換気空気に含まれる低濃度メタンを、補助燃料なしで自立的に分解するCataVAM™技術を実鉱山条件で実証したと発表した。

地下炭鉱では、石炭層から坑道に漏れる爆発性のメタンを薄めて排出するため、大容量の換気が欠かせない。排気に含まれる換気空気メタン(VAM)は通常1%を大きく下回る安全濃度だが、メタンは二酸化炭素(CO2)の約28倍の温室効果を持つ。VAMは同国炭鉱の漏出排出量の60%超、同国のメタン総排出量の約15%を占める。
従来の熱酸化装置は一般に900℃超で運転し、濃度が0.3%を下回ると補助燃料が必要になる。鉱山安全管理強化でVAM中のメタン濃度は過去10年で低下し、現在は通常0.2~0.4%で、0.2%未満の時間帯も多い。CataVAM™は高性能触媒を専用設計のハニカム型触媒再生ベッドに組み込み、0.5%から最小0.1%のメタンを450~650℃で自己熱運転により分解する。このベッドは、触媒反応、熱伝達、気流制御を最適化し、同じ大きさの従来型熱システム比で4倍超のVAM処理量を実現する。

地下坑道内を新鮮な空気が流れ、石炭層から漏れ出したメタンを含む換気空気メタン(VAM)として排出される仕組みを示した鉱山換気図。地上では、低濃度メタンを含む排気流がCataVAM™ユニットを通過し、メタンが分解される
(AI生成の模式図)
CSIROの上席主席研究員で環境・持続可能性チームリーダーのヨンガン・ジン(Yonggang Jin)博士は、CataVAM™は触媒材料、反応工学、流体力学、熱伝達、システム制御に関する同機構の約20年の研究開発に支えられていると説明した。持続可能鉱業技術研究ディレクターのガレス・ケネディ(Gareth Kennedy)博士は、旧来装置より小型で移設しやすく、立坑間で運べる点を強調した。
大型パイロット機は豪ニューサウスウェールズ州南部のGM3社のアッピン鉱山で実際のVAMを使って試験され、2026年4月までの試験で最大毎秒1.38m3の換気流を処理し、実証段階に当たる技術成熟度(TRL)7に到達した。ケネディ博士は「メタン濃度が約0.2%以下の実際のVAMで、98%を超えるメタン分解効率を実証しました」と述べた。GM3社の技術サービスマネージャーのラッセル・トーマス(Russell Thomas)氏は、実環境で新興技術を試験し、将来のメタン削減策に役立つ操業データを得る機会だとした。次段階では商業化パートナーと毎秒約5m3向けユニットの試験を進め、商用モジュールは毎秒約20m3を処理する設計となる。

CSIROのCataVAM™実証装置がアピン炭鉱に設置され、換気空気中のメタンを回収・処理することで温室効果ガスの排出量を削減している
(出典:いずれもCSIRO)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部