オーストラリアのジェームズクック大学(JCU)は6月23日、同大学の研究者らが、患者がストレスを受けている場合でも、脳波(EEG)を用いて健康な人と統合失調症の人を区別する人工知能(AI)機械学習ツールを開発したことを発表した。研究成果は学術誌Biomedical Signal Processing and Controlに掲載された。
統合失調症は世界人口の1%に影響すると報告される脳の疾患で、患者の死亡率は高い。多くの人は精神病の発症前に症状を経験するため、診断の改善と早期発見が効果的な管理に重要となる。研究チームは、健康な人、ストレスを受けた人、統合失調症患者の脳波(EEG)パターンに新しい機械学習アルゴリズムを適用し、AIの結果が医学上の最新の診断観察を確認するものとなった。
研究を主導したのは、JCU博士課程学生のギデオン・ヴォス(Gideon Vos)氏で、工学、データ科学、神経科学、心理学の研究者から成る学際チームの一員として研究に取り組んだ。脳波検査は、安静時や活動時に患者の脳の各部位から生じる電気インパルスを検出する。一方、ストレスを受けると、統合失調症の人の脳は健康な人と異なる反応を示す。同氏は、急性ストレス反応と統合失調症には重なる症状が多いが、同じ状況下でのストレス反応にはわずかな違いがあると説明する。
研究チームはオープンアクセスの脳波データセットを用い、ストレスが脳波に与える影響を考慮できるAI機械学習アルゴリズムを考案した。ストレス調整モデルは、統合失調症診断に関する確立された医学知識と一致する、生理学的に一貫したパターンを示した。同氏は、正確で信頼性が高く、再現可能な予測には、大量の高品質データでAIモデルを訓練することが不可欠だと指摘する。
医療診断でのAI利用は、AIが医療専門家から独立して最終判断を下すことではなく、「説明可能なAI」により専門家の判断を支援することを目指す。同氏は、AIが健康な人と統合失調症の人を分類できるかだけでなく、どの脳波の特徴を根拠にしたのか、分類が難しい場合は何が判断を妨げるのかを説明し、その説明を医療専門家が科学的根拠として検討できる必要があると述べた。「説明可能なAI」は、医療サービスへのアクセスが難しい遠隔地や地方の人々に、スマートフォンを通じて緊急性を確認し、医療提供者につなぐ手段にもなり得る。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部