オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は6月26日、ロボットは文章を読んで知識を吸収するのではなく、現実世界で動作を試し、人間の指導を受けながら少しずつ学習するという解説を発表した。

ロボットに教えることは、単に機械をプログラミングするよりも、幼児に教えることに例えられることが多い。
人工知能(AI)は、膨大な情報を吸収して急速に向上するものと捉えられがちだが、ChatGPTのような大規模言語モデルを支える学習は物理世界にそのまま当てはまらない。ロボットは文章を読んで学ぶのではなく、幼児と同じように環境と相互作用し、空間を動き、変化する条件に応答しながら、経験を通じて少しずつ改善していく。
CSIROのロボット研究者ブレンダン・ティッド(Brendan Tidd)博士は、ロボット工学の進展がデジタルAIより慎重に進む理由について、「幼児はある日突然、完璧に歩くわけではありません。まず、はいはいを覚え、つかまって立ち、最初のよろよろした一歩を踏み出します。ロボットも似ています。試行錯誤が貴重な学習経験になるのです」と説明した。
同博士によると、現実世界は言語よりはるかに多様で複雑であり、ロボットの行動には全て具体的な結果が伴う。テキスト生成AIのように、誤った回答をほぼ即座に修正して再試行することはできない。誤った動作をすれば、動作の再試行や作業のリセット、その結果を将来の学習に取り込む対応が必要となる。照明や位置、対象物の種類といった小さな違いでも結果は変わり、1分間のデータを得るには現実に1分かかる。

ロボットは文章を読んで学ぶのではなく、幼児と同じように、周囲の環境との直接的な相互作用を通して学ぶ。
(出典:いずれもCSIRO)
学習には、人間が作業を引き継いで見本を示す「ヒューマン・イン・ザ・ループ」も重要となる。ロボットは模倣の後、強化学習を用いた試行錯誤へ進むが、この学習は厳しく管理され、作業を成功できるのは一部の場合に限られる。現時点でも、髪をとかす、ジェンガで遊ぶ、ネジを交換するなど、人間には簡単な作業に苦労している。
同博士は、ロボットの用途は人を置き換えることより、農業、鉱業、インフラ点検など遠隔地や危険な現場で、人を危険から遠ざけることにあると指摘する。「私たちは、人々に、より刺激的で、洞察に富み、影響力のある仕事をする機会を与えたいのです」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部