オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は7月8日、年間500億リットル超の石油製品を輸入する同国が、供給途絶への脆弱性を減らし、排出削減とエネルギー安全保障を両立するには、国産低炭素燃料について、バイオマス由来燃料とPower-to-Liquids(PtL)という二つの主要経路を並行して開発する必要があるとの見解を示した。

CSIROの代替燃料研究は、二つの主要経路にわたって展開されている。
中東の石油・ガス市場の混乱や、ウクライナ戦争による供給への影響は、従来のエネルギー輸送経路と世界の燃料在庫の脆弱性を浮き彫りにした。電化はネットゼロ達成に不可欠だが、航空、重工業、農業、鉱業では、必要な規模や高温条件での利用に限界がある。CSIROは、単一の「最良」の技術を選ぶのではなく、用途に応じて二つの主要経路を組み合わせるポートフォリオ型の対応が必要だとしている。
第一の経路は、農作物、獣脂、使用済み食用油、農林業残さ、都市廃棄物などを用いるバイオマス由来燃料である。水素化処理エステル・脂肪酸(HEFA)は、再生可能ディーゼルや持続可能な航空燃料(SAF)を製造できる最も成熟した技術だが、国内のキャノーラ全量を燃料に使っても、ディーゼル需要の約5~10%しか賄えない。CSIROは原料供給の多様化とコスト低減に加え、バイオマスや廃棄物をガス化して各種燃料へ転換する技術の大規模化を進める。

バイオマスは循環型経済において大きな可能性を持つ一方、コスト、技術、社会面の課題が残されており、それらの解決にCSIROが取り組んでいる
(出典:いずれもCSIRO)
第二の経路は、回収した二酸化炭素(CO2)と、電気分解などで製造した水素を原料とするPtLである。CSIROはCO2回収、水素製造、次世代触媒、プラズマによるCO2分子の分解を研究している。さらに、低排出水素と窒素から製造する再生可能アンモニアは、船舶や遠隔鉱山の大型発電機で利用でき、重工業の石油依存を減らす可能性がある。
既存のエンジンや供給設備をほぼ改修せず使える「ドロップイン燃料」は、航空機や大型車両など更新に長期間を要する分野で重要となる。CSIROエネルギー技術研究部長のダニエル・ロバーツ(Daniel Roberts)博士は「この規模の課題に単一の解決策はありません。原料と技術を組み合わせ、規模、導入時期、原料の入手可能性、コストを個別に評価する必要があります」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部