オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は7月15日、発電・蓄電技術のコストを分析する「GenCost」の8年間を振り返り、相次ぐ世界的危機で技術別のコスト動向が二極化する一方、太陽光発電と蓄電池の普及により、同国の電力システムが化石燃料価格の変動に左右されにくくなっていると発表した。
CSIROのチーフ・エネルギー・エコノミストでGenCostを率いるポール・グラハム(Paul Graham)氏によると、2017年に最初のコスト予測を公表した当時は世界情勢が安定し、製造規模や学習率、導入量から技術のコスト低下を予測できた。しかし2021年以降、パンデミック後のインフレ、ウクライナ戦争、イラン戦争、データセンターの急増が世界のエネルギー市場を揺さぶった。

データセンターの急増が予想外の新たな電力需要を生み、ガスタービンの世界需要を急増させた。
その影響は技術によって異なる。中国の強固な製造基盤と生産能力の拡大に支えられ、太陽光発電と蓄電池はコスト低下を続けた。一方、風力やガスタービンなどはインフレ、供給網の混乱、製造能力の制約により、コストが上昇し納期も延びた。特に米国では、急増するデータセンター専用の発電設備としてガスタービンの注文が殺到し、価格の高止まりに加え、オーストラリアが新たなガスタービンを確保できない可能性も生じている。
オーストラリアではウクライナ戦争でガス価格が高騰し、2022年の電力価格は1メガワット時当たり189豪ドルに達した。しかし、数年間で6~8ギガワットの蓄電池を導入した結果、蓄電池が夕方の需要ピーク時にガス火力と直接競争し、価格を決めるようになった。同氏は「私たちは基本的に太陽光発電と蓄電池に救われました」と説明する。発電価格は直近1年間で、ウクライナ戦争前以来となる同60~80豪ドル程度まで下がり、規制上の標準小売価格も約10%低下した。

オーストラリアのエネルギー転換は、陸上風力、太陽光発電、蓄電池への長年にわたる継続的な投資によって形づくられ、世界の製造業の動向にも後押しされながら、着実に進んでいる。
(出典:いずれもCSIRO)
先物市場では、発電価格は2030年までに同80~90豪ドル程度になるとみられる。CSIROは、ネットゼロ目標を支えられる最も低コストの技術は、引き続き太陽光、風力、蓄電池だとした。ガス火力は発電量の約3~7%を担う小規模ながら重要な役割を残す。一方、原子力や二酸化炭素回収・貯留、太陽熱、海洋エネルギー、燃料電池などは、国内で送電網規模の商用導入例がなく、信頼できるコスト推計には実際の建設が必要だとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部