ニュージーランドのオークランド大学(University of Auckland)は7月31日、政府が商業化を重視して優れた基礎研究への資金を削減すれば、ディープテックのスタートアップが誕生する前に、その基盤を失いかねないとの同大学研究者の見解を紹介する記事を公開した。
同大学理学部の物理学者でマクダイアミッド先端材料・ナノテクノロジー研究所所長のニコラ・ガストン(Nicola Gaston)教授は、政府が進める科学制度改革について、果実を収穫するためにリンゴの木を根こそぎ引き抜くようなものだと論じた。実質的な知的財産に基づく商業機会「ディープテック」を生み出す力を築くには、政府による長期的かつ継続的な基礎研究助成が必要だとする。
政府の科学投資計画は、第一次産業とバイオエコノミー、繁栄のための技術、環境の持続可能性とレジリエンス、健康な人々と活力ある社会の4分野を投資の柱に定める。しかし同教授は、どの発見が経済的価値を生むかを事前に知ることはできないと指摘。こうした優先分野は、科学研究費の一部や研究開発の後期段階、産業別インフラへの投資に適用するのであれば妥当だとの考えを示した。
同研究所発のLiquium社は、電子デバイス用に研究された材料を、アンモニア製造のエネルギー消費と炭素コストを抑える触媒に転用した。Orbis Diagnostics社は、牛乳中のタンパク質と脂肪を測る検査技術から、B型肝炎のポイントオブケア検査へ事業を転換。Advemto社も、材料科学と太陽光発電向けの基礎研究をライフサイエンス技術の商機につなげた。
同研究所出身でOpo Bio社共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のオリビア・オギルビー(Olivia Ogilvie)氏は、ディープテックは発明から始まり、それが最も適切に解決できる問題を探すため、長く、しばしば混乱を伴い、技術と市場の両方のリスクを抱えると説明した。同教授は、過去1年の削減が科学投資計画の達成を脅かしているとし、10年後にも企業と経済的利益を生み出すには、現在の企業だけでなく、それらを生んだ研究の流れにも目を向けるべきだと訴えた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部