オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は8月12日、100年以上前の蝶を含む標本や市民科学の観察記録を基に国内の蝶の分布を見直した結果、定住性の少なくとも23種が分布域を変え、一部は東海岸沿いに南下しており、主因として気候変動が疑われると発表した。研究成果は学術誌Nature Ecology & Evolutionに掲載された。

蝶のコレクションは単に美しいだけでなく、生息域が時代とともにどのように変化してきたかを示すものでもある。
(出典:CSIRO)
CSIROのオーストラリア国立昆虫コレクションには、蝶の標本を収めた引き出しが2000箱ある。採集場所と時期の記録を、博物館の所蔵資料や科学文献、iNaturalist、Butterflies Australiaに市民が投稿した写真と組み合わせ、過去と現在の分布を比較できる。分類学者はこうした資料を基に、国内の蝶約465種の大半を記載し、学名を付けてきた。
蝶の同定、生物学、分布に関する専門書を2000年に著したマイケル・ブレイビー(Michael Braby)博士は、国内種の地理的分布を再検討し、ほぼ全ての分布図に更新が必要だと判断した。過去20~30年間に少なくとも100種で分布域が変化し、定住性の少なくとも23種では明確な変化が確認された。移動距離は55~960kmで、平均218km、年平均約10kmとなる。最長記録は英名Pale Ciliate-blue(Anthene lycaenoides)で、従来の南限だったクイーンズランド州北部キャノンベールから960km南のブリスベン地域に定着した。
また、モナシュ大学の地球変動生態学研究室を率いるシャワン・チョードリー(Shawan Chowdhury)博士らの世界規模の研究には、ブレイビー博士も参加した。世界の蝶約1万8000種の10%に当たる1758種について、105カ国・地域で分布域の変化が確認され、その大半は気候変動と深刻な気象現象に関連していた。
分布変化には、生息環境の変化、人による偶発的な移送、渡りをする種の一時的な移動、東南アジアからの侵入、調査増加による知見の更新も関係する。ブレイビー博士は「分布域を移した種では、気候変動が主な要因だと考えています。そのほか、外来または観賞用の寄主植物の利用や、火災後の再生植生など攪乱された地域への移動も考えられます」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部