ニュージーランド王立協会(Royal Society Te Apārangi)は10月9日、公的研究資金の実質的な減少を食い止め、安定した研究システムを構築するため、短期から長期までの段階的な投資計画を盛り込んだ報告書を公表した。今回の報告書「ニュージーランドの研究資金に対する脅威:能力、生産性、国家回復力に向けた安定的で将来を見据えた枠組みの構築」は、同協会アカデミーのフェローによる作業部会がまとめる全3報のうち、第1報である。
同報告書によると、ニュージーランドの官民を合わせた研究開発費は2024年に国内総生産(GDP)比1.54%で、経済協力開発機構(OECD)平均の約2.7%を下回った。主要な科学・イノベーション・技術(SI&T)関連基金の2025~26年度の資金額は、物価上昇を調整した実質ベースで5年前のピークを約28%下回った。政府の科学・研究への直接資金は、高等教育研究卓越基金(TREF)と研究卓越拠点(CoREs)を除くと、2026~27年度の10億270万NZドルから2029~30年度には8億6650万NZドルへ、名目ベースで約13%減る見通しである。報告書は、物価上昇を考慮すれば、実質ベースではさらに大幅な減少が避けられないとしている。
同報告書は、今後の取り組みを次の3段階に整理した。
提言の対象は先端技術に限らず、人文・社会科学、マオリの知識体系、環境科学、一次産業研究にも及ぶ。作業部会は、幅広い研究能力が、世界的な経済・技術変動への対応や、社会の結束、公平性を巡る複雑な課題の解決に重要だとしている。
今後は、短期的な組織再編を中心とする議論から、戦略的で継続性のある研究資金の枠組みへ政策の重点を移せるかが焦点となる。制度改革自体を元に戻すのではなく、新たな研究機関・資金制度を効果的に機能させながら、政権交代に左右されにくい超党派の投資目標を形成することが課題となる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部