アジア・太平洋地域、高評価維持 QS世界大学ランキング

2022年06月21日 小岩井忠道(科学記者)

アジア・太平洋地域の大学に対する国際的評価の高まりが、2022年6月8日に公表された高等教育の世界的評価機関であるクアクアレリ・シモンズ(QS:Quacquarelli Symonds)の「世界大学ランキング2023」であらためて裏付けられた。昨年同様、アジア・太平洋地域の大学が50位内に19校、100位内に34校が入っている。シンガポール国立大学が前年、前々年に続き、11位を堅持したのに加え、5年前の38位から年々、順位を上げ続けている北京大学が12位と、アジア・太平洋地域から初のベスト10入りも期待できる順位につけているのが目を引く。

米国のマサチューセッツ工科大学が11年連続で1位となったのをはじめ、10位までを欧米の大学が占める図式は今回も変わらない。2位以下はケンブリッジ大学(英国)、スタンフォード大学(米国)、オックスフォード大学(英国)、カリフォルニア工科大学(米国)、インペリアル・カレッジ・ロンドン(英国)、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(英国)、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(スイス)、シカゴ大学(米国)と続く。順位に変動はあったもののこれら10位までの大学の顔ぶれも前年と同じだ。

100位内に34大学

一方、11位以下には、11位のシンガポール国立大学、12位の北京大学(中国)に続き、清華大学(中国)が14位、南洋理工大学(シンガポール)が19位と、前年同様20位内にアジア地域の4大学が入っている。北京大学、清華大学がそろって前年より順位を上げたのが目立つ。50位までを見ると、21位香港大学、23位東京大学、29位ソウル大学、30位オーストラリア国立大学以下、アジア・太平洋地域の19大学が並び、上位100位内にも34大学が入った。順位の変動はあるものの50位内、100位内の大学数はそれぞれ前年と同数で、かつ顔ぶれも前年と全く変わらない。

国・地域別でみるとオーストラリアの大学が多いのが目を引く。100位内の大学数は7校と、中国、韓国の6校、香港、日本の5校を上回り、50位内にも中国と同数の5校と、香港(3校)、シンガポール、日本、韓国(いずれも2校)より多い。200位内にも前年から1校増えて14校が入り、同じく1校増えた2位の日本(9校)以下を引き離している。中国と韓国も1校ずつ増えてそれぞれ8校が200位内に入った。

「QS世界大学ランキング2023」トップ200内のアジア・太平洋地域大学

(THE2022順位はタイムズ・ハイヤー・エデュケーション「世界大学ランキング2022」順位)

世界順位 前年順位 前々年順位 THE2022順位 大学名 国・地域
11 11 11 21 シンガポール国立大学 シンガポール
12 18 23 =16 北京大学 中国
14 17 15 =16 清華大学 中国
19 12 13 46 南洋理工大学 シンガポール
21 22 22 =30 香港大学 香港
23 23 24 =35 東京大学 日本
29 36 37 =54 ソウル大学校 韓国
30 =27 31 =54 オーストラリア国立大学 オーストラリア
33 37 41 33 メルボルン大学 オーストラリア
=34 31 34 60 復旦大学 中国
36 33 38 61 京都大学 日本
38 39 43 49 香港中文大学 香港
40 34 27 66 香港科技大学 香港
41 38 40 58 シドニー大学 オーストラリア
=42 41 39 =99 韓国科学技術院 韓国
=42 45 53 =75 浙江大学 中国
45 43 44 70 ニューサウスウェールズ大学 オーストラリア
46 50 47 84 上海交通大学 中国
=50 47 46 =54 クイーンズランド大学 オーストラリア
54 53 48 =151 香港城市大学 香港
55 56 56 301~350 東京工業大学 日本
57 58 55 57 モナシュ大学 オーストラリア
=65 66 75 91 香港理工大学 香港
68 75 72 301~350 大阪大学 日本
70 65 59 301~350 マラヤ大学 マレーシア
71 81 77 =185 浦項工科大学校 韓国
73 79 85 =151 延世大学校 韓国
74 74 69 201~250 高麗大学校 韓国
77 68 66 =113 台湾大学 台湾
79 82 79 201~250 東北大学 日本
87 =85 81 =137 オークランド大学 ニュージーランド
90 93 92 =132 西オーストラリア大学 オーストラリア
94 98 93 88 中国科学技術大学 中国
99 97 88 =122 成均館大学 韓国
109 108 106 111 アデレード大学 オーストラリア
=112 118 110 351~400 名古屋大学 日本
123 143 132 601~800 プトラ大学 マレーシア
=129 144 141 601~800 マレーシア国民大学 マレーシア
133 131 124 =105 南京大学 中国
135 137 124 501~600 九州大学 日本
137 133 133 =132 シドニー工科大学 オーストラリア
=141 145 139 501~600 北海道大学 日本
=143 147 142 601~800 マレーシアサインズ大学 マレーシア
=155 186 185 301~350 インド理科大学院 インド
157 156 146 351~400 漢陽大学校 韓国
=172 177 172 インド工科大学ボンベイ校 インド
=174 185 193 インド工科大学デリー校 インド
177 180 168 351~400 清華大学 台湾
185 193 196 201~250 ウーロンゴン大学 オーストラリア
=190 206 223 301~350 RMIT大学 オーストラリア
192 197 197 251~300 ニューカッスル大学 オーストラリア
193 =194 217 251~300 カーティン大学 オーストラリア
194 225 194 157 武漢大学 中国
=195 200 214 192 マッコーリー大学 オーストラリア
=197 201 191 601~800 慶應大学 日本
=197 212 =197 =178 蔚山科学技術大学校 韓国

(QS World University Rankings2023、同2022、同2021、Times Higher Education World University Rankings 2022から作成)  =は同順位

学術関係者の評価重視

「QS世界大学ランキング」は、教育と研究の質をみる「学術関係者の評価」を重視しているのが特徴。13万人を超す高等教育に関わる世界の学術関係者を対象とする大規模調査結果を用いている。総合評価に占める配点比率も40%と最も高い。このほか、7万5,000人以上の雇用主にその大学が有能な卒業生をどれだけ送り出しているかを尋ねた調査結果を基にした「雇用者評価」、さらに「教員一人当たりの論文被引用数」、「学生一人当たりの教員比率」、「外国人教員比率」、「留学生比率」と、全部で6項目の指標により大学を評価している。

世界大学ランキングでは、英教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」が毎年公表しているランキングもよく知られている。QSランキングとの違いは評価指標が13項目と倍以上多く、「博士号取得者と学士号取得者の比率」や「博士号取得者数と教職員数の比率」、さらに教員一人当たりの研究助成金などの収入、論文数、国際共著論文数、産業界からの収入といったQSランキングにはない評価項目が含まれていることだ。

昨年9月に公表された最新の「THE世界大学ランキング2022」では、50位内に入ったアジア・太平洋地域の大学は8校、100位内は22校、200位内は39校にとどまる。「QS世界大学ランキング2023」ではそれぞれ19校、34校、56校だから、いずれも「THE世界大学ランキング2022」の数を上回り、特に50位内が2倍以上も多い。「QS世界大学ランキング2023」で200位内に入った56校のうち「THE世界大学ランキング2022」の順位より低く評価されている大学はわずか6校だけ。QSランキングの方がアジア・太平洋地域の大学を高く評価しているのは明らかだ。「QS世界大学ランキング」によるアジア・太平洋地域の大学に対する評価は定着しつつあるように見える。

異なる評価項目と配点比率

二つのランキングでこれほどの違いが出る理由は何か。QSランキングの評価指標が6項目と少ないことから、QSの評価項目の多くは、THEの同じ評価項目に比べ、配点比重が高くなっている。「学術関係者の評価」はTHEの33%に対し、40%、「学生一人当たりの教員比率」はTHEの4.5%に対し、20%、「外国人教員比率」と「留学生比率」はTHEがそれぞれ2.5%に対し、各5%という具合だ。一方、「教員一人当たりの論文被引用数」はTHEの30%に対し、20%、「雇用者評価」もTHEの15%に対し、10%と、逆に配点比重が低い評価項目もある。「博士号取得者と学士号取得者の比率」、「博士号取得者数と教職員数の比率」さらに教員一人当たりの研究助成金などの収入、論文数、国際共著論文数、産業界からの収入といったTHEにはあってもQSにはない評価項目もある。

オーストラリアと中国の評価結果を見てみると、QSのランキングで評価の配点比率が最も高い「学術関係者の評価」が、両国とも100点満点中、80点台、90点台という高得点を得ている大学が上位に並んでいる。特にオーストラリアは同じく配点比率の高い「外国人教員比率」と「留学生比率」でも100点満点か90点台の大学が大半だ。オーストラリア、中国は、配点比率がTHEほど高くない「教員一人当たりの論文被引用数」でも90点台という高得点を得ている大学が多いから、全体の評価が高い結果はうなずける。

この7年間、「THE世界大学ランキング」で200位内に入った大学がわずか2校という厳しい結果が続く日本の場合はどうか。研究力をみる指標となっている「教員一人当たりの論文被引用数」が、各大学ともオーストラリア、中国に比べはるかに見劣りし、「外国人教員比率」と「留学生比率」もまた特にオーストラリアに比べはるかに劣ることが見てとれる。これらがTHEの大学ランキングで低迷が続く理由の一つと推測できる。しかし、QEの評価手法では「教員一人当たりの論文被引用数」の配点比率がTHEより小さいことから低評価の度合いが減少し、他方、逆に配点比率の高い「学術関係者の評価」と「学生一人当たりの教員比率」で高得点を得たことにより全体評価が押し上げられた、とみられる。

「THE世界ランキング2022」で301~350位という評価の東京工業大学が55位、同じく301~350位の大阪大学が68位、201~250位の東北大学が79位となり、東京大学23位、京都大学36位と合わせて、前年に続き5大学が100位内に入った。続いて名古屋大学112位、九州大学135位、北海道大学141位、慶應大学197位と、200位内の大学数は前年より一つ多い9校となっている。