レノボISGのHPC・AI担当アジア太平洋ディレクターであるシニサ・ニコリック (Sinisa Nikolic) 氏は、同社の最新ツールを使えば、ヒトコホートのゲノムのマッピングを従来比で188倍速く行えることを明かす。
映画であれば、興行収入のトップとなるのは依然として大ヒット作であろう。けれど、医療に関しては、話は異なる。ライフサイエンス業界の関心は、ブロックバスターと呼ばれる大量生産医薬品の開発から、ニッチで価値の高い、患者個人向けのソリューションの開発へと移行している。
ライフサイエンスは、ゲノム配列決定(生物やウイルスが持つ遺伝物質を解読するために使用される包括的な検査手法)が不可欠になってきた分野である。ゲノム配列決定を使用すれば、研究者が遺伝子や環境要因によって引き起こされる病気について理解を深めるのに役立ち、診断や介入を早期に実施し、さらには治療の成功の可能性を高めることができる。
しかし、問題がある。ゲノムデータの量が急激に増加したため、「配列決定のパラドックス」が現れたのである。テクノロジーのおかげで発見と科学的課題の解決が進んだが、テクノロジーインフラ自体が障害になっている。
最近、IDCはレノボとインテルの依頼により、「高性能コンピューターのインフラを利用してライフサイエンスでゲノムデータの困難に対処する (Leveraging High Performance Compute Infrastructure to Address the Genomic Data Challenge in Life Sciences) 」と題したホワイトペーパーを発表した。このホワイトペーパーによると、既存の高性能コンピューティング (HPC) インフラの強化を考える最も大きな理由として、アジアの回答者の 28% が「ソリューションはスケーラブルではない」をトップに挙げた。2位は「カスタマイズが多すぎる」(20%) 、3位は「ソリューションが非常に複雑である」(24%) である。
ここで、HPCと人工知能 (AI) が役に立つ。レノボISG の HPC ・AI 担当アジア太平洋ディレクターであるシニサ・ニコリック (Sinisa Nikolic) 氏は、Genomics Optimization and Scalability Tool (GOAST) を活用して、ゲノミクス研究で直面するいくつかの主要な課題に対処する方法について教えてくれる。
GOASTは、HPCとAIを使用してヒトコホートのゲノムをすばやくマッピングします。そのため、研究者が単一のゲノムの分析に時間を費やすことはありません。HPCはハイスループット量に対応して解析スピードを加速し、AIはゲノム間の違いを理解するのに役立ちます。このソリューションは、病気に対する個人の感受性を測定し、特定の治療に対する反応を予測し、不要な副作用を排除します。GOASTの予測機能を利用すると治療に対する反応を低下させることができるため、医療従事者は病気の治療ではなく真の医療を提供できます。
シニサ・ニコリック氏とチームはレノボでHPIとAIを使いゲノム配列決定の業務をスピードアップさせる
初期の遺伝子配列決定の作業は、骨が折れ、時間がかかり、多くの労働力が必要でした。以前は、1つのヒトゲノムを処理するのに 60 時間から 150 時間かかっていました。このような余計な時間は利益と成長に影響を与え、科学的知見を得るまでの時間も遅らせることになります。例えばレノボの GOASTは、HPCテクノロジーの導入により、単一のヒトゲノムを48分で処理できるようになりました。これは今までの記録を破る、188 倍の速さです。GOASTはまた、ゲノム分析を加速し、高価なアクセラレーターや特許ソフトウェアを使用するソリューションよりもコストは3分の1低くなり、サンプル・スループットを向上させています。これにより、高性能な分析が研究機関にとって手頃な価格で利用しやすくなり、知識の民主化が進み、イノベーションへの障壁が低くなります。
もちろんです。例えば、ヨーロッパで最も強力なスーパーコンピュータであるMareNostrumを運営・管理しているバルセロナ・スーパーコンピューティング・センター (BSC) は、複雑なマルチオミクス・ワークフローの実行方法を強化するために私たちと共同作業を行っています。BSCは、強力な計算資源を提供してエンドユーザーをサポートすることがいかに重要であるかを理解しています。しかし、毎年生成されるデータの量は増加しているので、計算資源の提供は難しくなってきています。BSCはGOASTを使うことで、全ゲノムサンプルの処理時間を短縮し、がんやその他の病気に関する重要なマルチオミクス研究を加速させることができました。
世界レベルのソリューションをお客様に提供するレノボ独自のアプローチは、学際的な専門性によるものです。HPC & AI部門の総責任者であるスコット・ティース (Scott Tease) 氏が率いるHPC & AIチームの最高のエンジニアたちと、ライフサイエンスグループの業界最高の科学者たちが協力し、命を救うことのできる発見を促進させる強力なソリューションを提供しています。GOASTは、ハイスループット分析を増やすことで、あらゆる研究者が生物医学的知見を得るまでの時間を短縮し、プレシジョン・メディシン(精密医療)への道を切り開く力を与えています。基礎研究であれ、感染症であれ、プレシジョン・メディシンであれ、ここにはアクセス可能な技術革新が存在します。
(2022年11月02日公開)