2023 年の国際女性エンジニアリングデーを記念して、この分野でジェンダーの固定観念を打ち破る5人の先駆的な女性エンジニアのすばらしい業績に目を向けてみたい。(2023年8月3日公開)
男女格差はまだ根強いものの、女性エンジニアたちは今日まで世界中で最も注目すべきイノベーションやプロジェクトの一部を支え続けてきた。世界中のエンジニアのうち女性はわずか 16.5 パーセントであるが、多様性と包括性の促進を目的とした組織的な取り組みにより、女性エンジニアの割合は時間の流れとともに確実に増えてきた。
今年の国際女性エンジニアリングデー(6月23日)を記念して、「2023 年アジアの科学者100人」に選ばれた5人の女性エンジニアを祝福したい。先駆的なナノテクノロジー研究からミサイル システムの構築に至るまで、これらの女性は社会の思い込みに挑み、この分野で歴史に消えない足跡を残している。
「廃棄物を富に」の提唱者であるラナトゥンガ博士を有名にしたのは、何といっても建設開発プロジェクトに向けて、スリランカの産業廃棄物と農業廃棄物を経済的かつ環境に優しい原材料に変えたことである。
産業廃棄物からのフライアッシュと炭化カルシウムの残留物を、籾殻やトウモロコシの穂軸の灰などの農業副産物とともに使用すると軟らかい土壌を安定させることができ、耐久性のあるインフラを構築することができる。ラナトゥンガ博士は同じ廃棄物を使用して、廃鉱山の劣化した土壌の修復も行っている。
ラナトゥンガ博士は2020 年に最も有望な若手地盤工学技術者のためのブライト・スパーク講演賞と発展途上国の若手女性科学者のための2022年OWSDエルゼビア財団賞を受賞し、その貢献が認められた。スリランカのモラトゥワ大学の講師であるラナトゥンガ博士は、発展途上国の若い女性が科学と工学の分野で使命を追求できるよう支援している。
同じような理想に突き動かされているのはセプテバニ博士である。博士は材料科学工学の専門知識を注ぎ、インドネシアのアブラヤシの プランテーションから発生するバイオマス廃棄物の可能性を活用しようとしている。
セプテバニ博士は現在、インドネシア国立研究開発庁 (BRIN) の化学研究センターの上級研究員である。博士のチームは、バイオマス廃棄物の革新的な化学処理に注目し、ナノセルロースなど高価値のバイオポリマーを開発しようとしている。ナノセルロースは、包装、電子、エネルギー、健康など、さまざまな分野での応用が期待される有望な材料構成要素である
セプテバニ博士は大学、政府機関、産業界と連携し幅広い取り組みを行い、日本の農林水産省 (MAFF)による2022年若手外国人農林水産研究者表彰やインドネシアの若手科学者のためのメルク賞などといった賞を受賞している。
ブヴァネスワリ博士は、電力の品質を向上させる電力変換器の改良に取り組んでいること、そして先進技術を利用して教育に真摯に打ち込んでいることから、多くの人々から評価されている。ブヴァネスワリ博士はインドのマヒンドラ大学の電気電子工学の著名な教授であり、数十年にわたる貴重な教育経験をその職務に役立てている。また、啓発的な講演を通じてさまざまな業界の現役エンジニアと関わり、電力の品質問題に対する意識を高めている。
ブヴァネスワリ博士の貢献は世界的に認められ、米国国立工学アカデミーの誉ある国際会員に選出された。
トーマス博士はインドの防衛研究開発機関 (DRDO) での35年にわたる輝かしいキャリアで知られており、男性優位のSTEM分野に進もうとする世界中の若い女性にインスピレーションを与えている。
トーマス博士はDRDOの航空システム局長として、有人・無人航空機、航空エンジン、早期警戒空中システム、巡航ミサイルなど、すべての航空システムの責任を担っている。
ミサイルは平和の道具になるという信念のもと、トーマス博士は「強さは強さを尊ぶ」という考え方を強調する。国産ミサイル・システムの開発における先駆的な功績が認められ、トーマス博士は名誉あるAPJアブドゥル・カラム賞を受賞した。
ザン 博士は現在、台湾の陽明交通大学フォトニクス学部の教授である。博士は有機・酸化物半導体の研究で25年以上の経験を持つ。
ザン博士は、フランスの研究者であるオリヴィエ・ソペラ (Olivier Soppera) 博士との共同研究で医療診断用金属酸化物センサー用のレーザー材料とプロセスの開発を進め、2022年日仏台湾賞を受賞した。このセンサーは、呼気アンモニアを検出する。呼気アンモニアとは患者の腎機能評価に有用なバイオマーカーであり、ザン博士により発見された。
ザン博士は新しい構造半導体デバイスの革新的発明で80以上の特許を持ち、電気電子学会(IEEE) 台湾支部の女性工学グループの議長も務めている。