Twist Bioscience社 は、細胞外 DNA の次世代シーケンシング向けの新しいライブラリ調製キットと改良された標準物質を使用して、がん研究のワークフローを最適化している。(2025年1月20日公開)
リキッドバイオプシーは、がんを検出し、診断する強力なツールとして注目を集めている。リキッドバイオプシーは侵襲性を最小限に抑え繰り返し行える方法であり、生体液体サンプル内のバイオマーカーをスクリーニングするために使用される。生体液体サンプルには、セルフリーDNA (cfDNA) と呼ばれるDNA 断片が含まれており、これはさまざまな形態を持ち自由に血液中を循環している。cfDNA を使うリキッドバイオプシーは、次世代シーケンシング (NGS) と共に、がんを早期発見し、高度な個別化治療の開発に向けた有望な機会として注目されている。
しかし、cfDNA は分解しやすく、液体サンプル内での濃度は通常低いため、cfDNA のシーケンシングは難しい。このため、ライブラリ収量と平均ターゲットカバレッジが狭くなり、アレル頻度の低い変異体の検出と低頻度のバイオマーカーの識別に影響を与える。これらの問題に対処するため、バイオテクノロジーとゲノミクス分野の大手企業であるTwist Bioscience社は、NGS用の高収量cfDNA ライブラリを可能にする Twist cfDNA ライブラリ調製キットを開発した。
Twist Bioscience社のCEOであり共同創設者であるエミリー M. レプロースト (Emily M. Leproust) 博士は「当社のNGS製品群の中でも最新製品であるTwist cfDNAライブラリ調製キットは、サンプル量が少なくても性能の高さが求められるリキッドバイオプシーや癌研究ワークフローでよく見られる課題を克服します」と述べる。
市販されている他の cfDNA ライブラリ調製キットと比較すると、Twist Bioscience社の製品は変換率が 2 倍向上している。これにより収量の増加、平均ターゲットカバレッジの拡大、そして希少変異体を含む低アレル頻度の変異体の検出がより高感度となり、正確なものとなる。サンプル量が1 - 20 ng/mlという少量であっても、堅牢な性能が期待できる。
レプロースト博士は「当社は、プロトコルとバッファー配合を最適化し、新しいリガーゼを開発しました。これにより、サンプルの量が少なくても変換効率が向上し、反応時間が短縮されます。変換率が高くなると収量も高くなり、感度も高まります」と述べ、新しいcfDNAライブラリ調製キットは性能全体を大幅に向上させると力強く語った。
高収量ライブラリは、NGS で cfDNAバイオマーカーを正確に検出するために不可欠である。たとえば、腫瘍やがん細胞に由来する cfDNA の一種である循環腫瘍 DNA (ctDNA) には、がんの予後と診断に役立つ貴重な情報が含まれているが、非常に断片化されているため検出は難しい。高い変換率を持つTwist cfDNAライブラリ調製キットは、がん研究においてより高感度なctDNAアッセイの開発に役立つ。
2024 年 2 月の発売以来、Twist cfDNA ライブラリ調製キットは臨床医や研究者の間で話題となっている。アジア太平洋のある研究室は、体細胞変異の低頻度バリアントを検出するためにこのキットを使用しており、サンプル量が少ないにもかかわらず、カバレッジが30%増加したことを確認している。この結果は少ないPCRサイクル数で達成されたため、ターンアラウンド時間とバイアスの両方の削減ともなった。
このソリューションはワークフローの効率化を目的として設計されており、エラー率とシーケンシングの再実行を最小限に抑えながら、2 時間以内にシーケンシング可能なライブラリを生成する。Twist cfDNAライブラリ調製キットには、2つの構成要素がある。1つは全ゲノム シーケンシング用の cfDNA ライブラリ調製キットであり、もう1つはターゲットエンリッチメント用の Twist cfDNA ライブラリ調製ハイブリダイゼーション・ミックス キットである。
このキットはTwist cfDNA Pan-Cancer Reference Standard v2により補完される。これは、標準化された高品質コントロールセットであり、特定のがん変異体の分析検出限界 (LoD) とブランク限界 (LoB) を確立するために使用される。また、NGS アッセイ ワークフローの品質を追跡し、実行中のアッセイ法の忠実性を評価するためのコントロールとしても機能する。標準物質は84 の遺伝子に見られる400 を超えるバリアントサイトを誇り、Twist Bioscience社が提供するさまざまなターゲットエンリッチメント・ソリューションに容易に組み込むことができる。
同社の最新の cfDNA関連製品は、がんの早期発見、腫瘍のプロファイリング、疾患における分子変化のモニタリングなど、さまざまな用途におけるリキッドバイオプシーの可能性を高めている。また、Twist Bioscience社が精密腫瘍学と個別化治療の研究の最前線に立ち、NGS ポートフォリオの拡大と改善に注力していることの現れでもある。
レプロースト博士は最後に「NGS ワークフローでの cfDNA の使用は、研究と臨床応用における重要なツールとなっています。当社はコア技術を活用して新しいソリューションを開発し、既存のソリューションを最適化することによりNGS の限界を押し広げ、がん研究の未来を作ります」と述べた。