アレルギー判断が不正確であると、患者は効果の低い薬を使用し、治療に悪影響が出るかもしれない。(2025年3 月13日公開)
医療従事者が患者に薬を投与する場合、アレルギー判断を基にして、悪影響の出る薬は与えないようにしている。最近の調査から、アレルギー判断は誤っていることが多く、患者を助けるどころか治療の選択肢を制限していることがわかった。
以前の調査では、香港には薬物アレルギーの疑いを持つ人が人口の6 - 7%いるが、そのうち、20%が非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID) に関連していることが示された。アスピリンは抗血小板作用のあるNSAIDの一つであり、世界の死亡原因の第2位となる脳卒中を含めた心血管疾患の第一選択治療薬となっている。アスピリンによる早期治療は脳卒中の再発リスクを最大60%低下させることができるが、NSAIDアレルギーを持つ患者にはアスピリンを投与できないため、治療してもよい転帰にはつながらないかもしれない。
香港大学LKS医学部 (HKUMed) では、医学部の学生であるチェリル・ツイ・チュクウン (Cheryl Tsui Cheuk-wun) 氏が中心となり、医学部のフィリップ・リー・ヘイ (Philip Li Hei) 診療助教授の指導で、学際的研究が行われた。この研究は、不正確なNSAIDアレルギー判断が脳卒中の転帰に与える影響と割合を明らかにすることを目的としていた。
研究で2008年から2014年までの電子医療記録のデータを分析したところ、脳卒中患者は全体人口と比較して、NSAIDアレルギーと判断されている可能性が高いことが分かった。
NSAIDアレルギーと判断された患者は、アスピリンの代わりに代替薬を処方されることが多く、死亡率、末梢血管疾患、主な心血管有害事象の割合が著しく高い。
研究チームは5人の脳卒中生存者と接触できた。検査したところ、そのうち4人は、医療記録にNSAIDアレルギーと記載されていたにもかかわらず、NSAIDアレルギーではないことがわかった。
ツイ氏は「患者は、長年のアレルギー判断が正しくなく、アスピリンを安全に使用できたことを知り、しばしば愕然としていました」と述べた。「医学部の学生として特に充実した学習ができる年次であるエンリッチメントイヤーに実施した研究で、臨床診療と患者の転帰に大きな影響を与えることができると気づくことができ、信じられないほどやりがいがあります」と彼女はつけ加えた。
香港大学医学部神経学科に属し、脳卒中部門の長であるゲイリー・ラウ・クイカイ (Gary Lau Kui-kai) 准教授は「未確認の薬物アレルギーを持つ患者は、NSAIDを再び安全に使用できるかどうか検査を受けることが重要です」と述べた。研究チームは、特に心血管疾患のリスクがあり、記録にNSAIDアレルギーがある患者については、アレルギー判断の不正確性を低下させる対策を取るべきと述べた。チームは、リスクの低い人ならば、看護師主導のトリアージシステムを受けることができると語る。このシステムは他の薬物アレルギー対策で効果が実証されている。
この研究は、香港での薬物アレルギー検査を拡大させる必要性を浮き彫りにした。「調査から、香港での薬物アレルギー判断の大部分は不正確かもしれず、ほとんどの患者は適切な薬物アレルギー検査を受けたことがないことが明らかになりました」とリー助教授は述べた。 「誤ったアレルギー判断により、患者は効果の低い薬を使わざるを得なくなり、重大な健康被害が出るかもしれません。この被害は潜在的なものかもしれないし、あるいは致命的な結果となるかもしれません」
彼は、HKUMed と連携して地域の薬剤師に薬物アレルギーの評価権限を与えるなど、薬物アレルギー検査の利用可能性を高める革新的な戦略の実施を奨励した。