【AsianScientist】 新たなAIツール、膵臓がんの検出精度を向上

がんは血流中に特有の化学的痕跡を残す。研究者らは今回、こうした代謝の手掛かりを読み取り、膵臓がんをより正確に見つけるAIシステムを訓練した。(2026年8月5日公開)

がんは、腫瘍の増殖を支えるために体の代謝を作り替える性質がある。代謝物はこうした細胞プロセスの後に残る化学産物であるため、それを調べることで病気の明らかな兆候が分かる。これにより、早期発見が今なお極めて難しい膵臓がんでは、メタボロミクスが特に有用となる。

膵臓がんの診断や経過観察に現在使われている血液バイオマーカーCA19-9は、決して完璧ではない。その値は、ほかのがんや良性疾患でも上昇することがある。代替となる代謝マーカーを探る研究はこれまでにも行われてきたが、臨床現場でCA19-9を一貫して上回るものはなかった。

学術誌『Nature Communications』に掲載された新たな研究で、台湾大学病院と中央研究院の多分野合同チームは、PanMETAIと呼ばれる診断ツールを開発した。高度なメタボロミクスと人工知能を組み合わせることで、このプラットフォームは患者の血液中の化学成分、バイオマーカー値、臨床情報のパターンをつなぎ合わせ、高い精度で膵臓がんを見つける。

研究者らは、高分解能プロトン核磁気共鳴(1H NMR)分光法を用いた。これは、複雑な試料調製を行わずに血清の詳細な化学フィンガープリントを作成できる技術である。少数の分子だけに注目した従来の質量分析ベースのメタボロミクス手法の多くとは異なり、この方法はがんを駆動する広範な代謝変化の全体像を広く捉える。

これらの代謝シグネチャーに、患者の年齢、標準的ながんマーカーCA19-9の値、膵臓がんの進行との関連が示されているアクチビンAと呼ばれるタンパク質など、臨床的に関連するほかの情報を組み合わせた。

この複雑なデータを扱うため、研究者らはいくつかの最先端AIシステムを精査した。最終的に、PanMETAIを動かすモデルとしてTabPFNモデルを選んだ。これは、多数の変数にまたがる微妙な関係を検出するよう設計されたAIの一種である。

台湾のコホートに属する902人のデータを用いたところ、PanMETAIは、初期段階の疾患を含むがん患者と高リスク対照者をほぼ完全に識別した。重要なのは、リトアニアの独立コホート322人で検証した際にも、このモデルが高い性能を維持したことだ。これは、多様な集団において膵臓がんを検出する同アルゴリズムの堅牢性を示している。

研究者らが特に興味を引かれたのは、PanMETAIが、がんの特徴としてよく知られる比較的少数の意味のある代謝変化に着目した点だった。これには、HDLコレステロール値の低下、グルコース値と乳酸値の上昇、アミノ酸代謝の乱れが含まれていた。

PanMETAIは精度に加え、病院や研究センターでの導入を支える実用上の利点をいくつも備えている。このプラットフォームは、標準化されたNMRベースのワークフローに基づいており、一貫した結果を生み出す。また、小規模な患者コホートで訓練した場合でも良好に機能したため、入手が難しい可能性のある大規模データセットの必要性を抑えられる。さらに、潜在的な交絡因子がある場合や、20年近くにわたって収集されたサンプルを用いた場合でも、予測は安定していた。

「NMR分光法で得られる豊富な代謝情報とAIの力を組み合わせることで、膵臓がんを最も早く、治療しやすい段階で検出できるツールを作り出しました」と、研究著者で台湾大学の内科学教授であるユーティン・チャン(Yu-Ting Chang)教授は述べた。

「この技術を臨床現場に届け、より多くの患者がタイムリーな診断と治療の恩恵を受けられるようにすることが目標です」と同教授は付け加えた。

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