国連、2022年を持続可能な開発のための国際基礎科学年と宣言

国連総会は、2022年を持続可能な開発のための国際基礎科学年として宣言し、2030年までに持続可能な開発目標を達成するという基礎科学の役割を認識した。

AsianScientist - 世界中で基礎科学に対する取り組みが注目を集めるようになってきた中で、国連 総会は、2022年を持続可能な開発のための国際基礎科学年として承認する決議を採択した。この宣言は、2021年12月2日に発表された、国連の193加盟国の勧告に留意したものだった。

国連はまず、繁栄を達成し、不平等を減らし、地球の未来を守るための戦略を推進する緊急行動の呼びかけとして、2015年に2030アジェンダと17の持続可能な開発目標を設定した。期限である2030年まで10年を切った今、世界中の加盟国や機関は「飢餓をゼロに」、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、「気候変動に具体的な対策を」、「産業と技術革新の基礎をつくろう」などの目標に向けて今でも意欲的な計画を立てている。

社会的変化を進めるにあたり、基礎科学は、生物医学から製造まで、影響力の大きい応用の根底を支える基盤として機能する。ただし、基礎科学への投資額は国によって大きく異なり、基礎科学に割り当てられる額は研究費のうちわずか10%未満という国もある。

新しい決議を採択することで、国連は基礎科学の価値についての認識を高め、生活水準を向上させ持続可能な開発を達成させようという希望を持つ。基礎科学の分野で能力を構築することにより、各国は、将来の脅威に備えつつ今日の緊急の問題に対応できるようになるであろう。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックへの対応は輝かしい1例である。数十年前の基礎的な分子生物学研究で発見された原理に基づいてメッセンジャーRNA技術を使用した最初の承認ワクチンが作られた。一方、分子とその構造や機能に関する発見は、エネルギー効率の高い反応を促進し、耐久性の高い材料を構築するための基礎を築いている。

基礎科学と社会の進歩との関連性を示すもう1つの例として、家庭や産業で日常的に使用されているほぼすべての電子機器の重要な部品であるトランジスタの開発が挙げられる。約50年の基礎研究の後で、 最初のトランジスタラジオが市場に出まわり、その後、回路の小型化への道が開かれた。現在、何千もの小さなトランジスタがつながり、スマートフォンや高性能コンピュータの中で機能している。

2022年が基礎科学の年として正式に承認されたことにより、同年6月30日から7月1日にかけてキックオフ会議が予定されている。イニシアチブと活動が開始され、基礎科学の取り組みへの支援が世界的に促進される予定である。これは、国際純粋・応用物理学連合が他の25の科学組合や研究機関と手を携えて主導する4年間のキャンペーンの集大成となる。

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