妊娠糖尿病と子どものADHDリスクの関連性を否定 台湾

台湾の国家科学及技術委員会(NSTC)は6月26日、台湾の研究チームが糖尿病の母親から生まれた子どもの注意欠陥・多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: ADHD)のリスクについて、多国間ビッグデータの解析を通じてこれまでの理解を覆す発見をしたと発表した。この研究成果は、Nature Medicineに掲載された。

ADHDの原因としては、遺伝や妊娠中の環境リスク、後天的要因などが考えられている。多くの研究で、妊娠糖尿病が子どもの神経発達障害と関連している可能性があることが判明しているものの、分析結果を狂わせる可能性のある家族性の遺伝学的要因や環境要因が十分に考慮されていない。また、妊婦のサンプル数が限られていることも、関連性の検証を難しくしている。

この関連性を検証するため、成功大学(NCKU)医学部のエドワード・チアチェン・ライ(Edward Chia-Cheng Lai)教授率いるチームはNSTCからの長期支援の下、国際的な学術研究組織NeuroGen(Neurological and Mental Health Global Epidemiology Network)と協力して研究を行った。研究チームは、台湾、ニュージーランド、香港、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの7カ国の研究データに基づく親子集団研究を用いて大規模なサンプルサイズを確保した。これらのデータには、約360万組の母子の医療記録が含まれていた。

家族性の遺伝的影響など、測定が困難な要因を考慮に入れるため、研究チームは兄弟姉妹対照研究デザインを利用した。従来の研究デザインに基づく研究では、妊娠糖尿病が子どものADHD発症リスクをわずかに増加させることが示唆されていた。しかし今回の研究で、遺伝的影響と環境的影響を考慮に入れて検証した結果、このリスクは消失し、妊娠糖尿病に関するこれまでの理解を覆すとともに、臨床的に考慮すべき現実的なエビデンスが得られた。

この研究プロジェクトでは国際的な協力のもと因果推論方法論の応用が行われた
(出典:NSTC)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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