量子鍵配送 (QKD) 技術の重要なブレークスルーを達成 台湾・陽明交通大学

(出典:NYCU)

台湾の陽明交通大学(NYCU)は2月4日、同大学の研究者らが台湾大学(NTU)と日本の情報通信研究機構(NICT)と共同で、量子鍵配送(quantum key distribution:QKD)技術における重要なブレークスルーとなる、革新的な非同期ビットレート符号化・復号化(asynchronous bit-rate encoding and decoding)技術を開発したと発表した。この研究成果は、学術誌APL Photonicsに掲載された。

この共同研究は、鴻海研究院(HHRI)の半導体研究センター長であり、NYCUのチェア教授であるハオチュン・クオ(Hao-Chung Kuo)博士の主導で行われた。開発した非同期符号化・復号化技術を応用することにより、研究チームは、遅延線干渉計(DLI)の光路の不一致(optical path discrepancies)を最小限に抑制し、自由スペクトル領域(FSR)を拡大し、熱撹乱に対するシステムの耐性を大幅に向上させることに成功した。実験の結果、FSRを1 GHzに拡張したことで、量子ビット誤り率(QBER)を2.2%まで低減し、セキュアキーレート(SKR)が77.32 kbpsまで向上することが実証された。これは、安定した量子通信に向けた飛躍となる。

さらに研究チームは、安定性の高い分布帰還型レーザーダイオード(DFB-LD)を光源として採用し、波長変動を±0.05 pm(ピコメートル)以内に制御した。これにより、長期的な復号エラーが大幅に減少し、システム全体の安定性が向上した。

この研究成果は、ネットワークセキュリティ、金融、軍事用途におけるQKDの実用化への道を開くことが期待される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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