子宮内膜の「一次繊毛」が胚の着床を左右、不妊診断の新指標に 台湾中正大学

台湾の国家科学及技術委員会(NSTC)は6月3日、中正大学(CCU)のシャオジェンク・ツァイ(Shaw-Jenq Tsai)学長率いる研究チームが、子宮内膜にある微小構造「一次繊毛」が、胚の着床を左右する鍵であることを発見したと発表した。5µm未満のこの構造は細胞の「アンテナ」として働き、不妊の診断や治療に新たな方向性をもたらす可能性がある。研究成果は学術誌Journal of Biomedical Scienceに掲載された。

研究チームによると、胚の着床には、子宮内膜間質細胞が一次繊毛を適切に伸ばせるかどうかが関わる。一次繊毛にはプロスタグランジンE2(PGE2)の受容体EP4が存在し、排卵後1週間の着床期に著しく伸長する。この繊毛が子宮内環境のPGE2シグナルを感知し、間質細胞が胚の着床を支える脱落膜細胞へ分化する「脱落膜化」を促す。

子宮内膜症は女性不妊の主要因の一つで、患者の30~50%が不妊を経験するとされる。同学長のチームは、患者の子宮内環境で形質転換増殖因子β1(TGF-β1)が増加し、一次繊毛の形成を抑制することを突き止めた。これにより繊毛が短く・少なくなり、脱落膜化が妨げられて着床に適さない環境になるという。筆頭著者のファンツ・ホウ(Huan-Tzu Hou)氏によると、AI支援の解析システムにより、繊毛異常が子宮内膜の受容性低下の原因であることを特定した。マウス実験でも、TGF-β1濃度を高めると繊毛が短くなり妊娠率が低下し、TGF-β1シグナルを阻害すると繊毛形成が回復し、着床率が有意に改善した。

研究チームは成功大学病院産婦人科とも連携し、臨床的な裏付けを得た。胚移植後に妊娠した女性は子宮内膜細胞の一次繊毛がより長く豊富で、繊毛の長さと量を指標とした妊娠率の予測精度は80%を超えた。一次繊毛は、将来の不妊診断における有望なバイオマーカーとして期待される。

成功大学病院産婦人科生殖内分泌部門のメンシン・ウー(Meng-Hsing Wu)部長は、子宮内膜症患者は同年齢の子宮内膜症のない女性に比べ、胚移植後の妊娠率が著しく低いと説明し、子宮内膜の受容性が胚の着床と成長を左右する重要な要因だと指摘した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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