フィリピンのNational Academy of Science and Technology(NAST)は、遺伝子組み換え作物(GMO)が食用として安全であり、農家にとって有用であるという従来の立場を繰り返し表明した。国営フィリピン通信社(PNA)が5月4日に伝えた。
2023年2月に撮影された、アンティケ州シバロムの農場で栽培されたゴールデンライス
(Photo courtesy of Sibalom Municipal Agriculture Office)
(出典:PNA)
NASTの表明は、控訴裁判所(CA)が健康に対する憲法上の権利と環境保全の維持を理由に、ゴールデンライスとナスの遺伝子組換え品種(Btナス)に関する商業的種苗生産、実地試験、それらに関連する活動の実施を停止したことを受けてのものである。NAST農業科学部門のチーフであるエウフェミオ・ラスコJr (Eufemio Rasco Jr)氏によると、Btナスは、農薬を使わなくても済むように遺伝子組み換えされた種子から作られ、ゴールデンライスは、トウモロコシを使ってベータカロチンを含むように遺伝子組み換えされたものだ。
「NASTは遺伝子組み換え作物の使用を長い間、支持すると表明してきました。おそらく、Btナスとゴールデンライスの使用に関する戦いは、20年以上続いています。科学者の中には、これらを安全に利用し消費できると繰り返すことに、疲れを感じる者さえいます」とラスコ氏はインタビューに答えた。しかしながら、NASTはCAの決定を非難しているわけではない。差し迫った問題に対する解決策を科学技術が提供するものであることを繰り返し述べたいだけであると、ラスコ氏は明言している。
Btナスを栽培することは、作物の不良品を減らし、農家の収穫量を増やす。また、農家は農薬を使用する必要がなくなるため、より安全な消費を可能にする。一方、ゴールデンライスは、その恩恵を消費者が受け取ることができる。すなわち、ビタミンA欠乏症の軽減に役立つ。遺伝子組み換え作物の開発者が、これらを高値で農家に販売する予定はない。
植物栽培による生産物のモラトリアムに関するNASTの見解を記す書類が、最高裁判所、環境天然資源省、農務省、PhilRice、植物育種研究所へ送付されている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部