シンガポール首相府(PMO)は5月30日、「Asia Tech x Singapore (ATxSG) 2024」の開催に際し、オープニングスピーチで、新技術を社会の利益のために責任を持って活用する重要性が強調されたことを伝えた。
イベントは5月29~31日に開催され、世界各国から様々な技術者が参加した。ヘン・スイキャット(Heng Swee Keat)副首相は、「人工知能(AI)や量子コンピューティングなどの新技術は、気候変動や公衆衛生、高齢化の問題解決に役立つ一方、サイバーセキュリティの脅威や偽情報に悪用されるリスクもあります」と述べ、技術の発展とリスク管理のために次の3つの優先事項を提唱した。
- 新しいテクノロジーを育成するための環境整備
テクノロジーとイノベーションの発展のためにはエコシステムを構築する必要がある。例えば、シンガポールでは過去に、量子技術センター(CQT)と国家量子局(NQO)を設立し、量子技術の発展と社会実装を進めてきた。今回新たに発表する国家量子戦略では4つの重点分野を特定し、産官学民が協力して、研究、エンジニアリング能力、人材育成、産業界との連携を統合的に推進する。これにより、シンガポールはテクノロジーの利点を最大限に活用し、グローバルな課題に取り組むことができる。
- 持続可能なテクノロジーの利用
情報通信技術(ICT)は多くの恩恵をもたらす一方、データセンターは情報処理に大量のエネルギーを消費しており、地球規模の気候危機の一因となっている。シンガポールは、データセンターのグリーン化を重要視しており、今回発表する「グリーンデータセンター・ロードマップ」計画を通じて、持続可能性を優先する事業者に新しいデータセンターの容量を割り当て、エネルギー効率とグリーンエネルギー利用を強化し、2050年までにネットゼロを達成することを目指す。
- 適切なテクノロジー管理体制の確立
新技術を公益のために活用する上で、優れたガバナンスを整備する。シンガポールでは2019年にアジア初の「モデルAIガバナンス・フレームワーク」を発表し、今年1月には生成AIに関する広範な協議を経て、今回、最終モデルを発表する。シンガポールは、地域や国際レベルでもAIガバナンスを推進し、包括的なイノベーションを目指す。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部