2024年07月
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自然からの着想で安定糖化合物の合成を促進 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は6月19日、NUSの研究者が、官能基を保護する保護基を使わず、天然に存在する糖を多様なクラスの安定配糖体と糖タンパクに変える新しい生体模倣の概念を開発したと発表した。研究成果は科学誌natureに掲載された。

今回発表されたイノベーションは、炭水化物の合成やタンパク質の翻訳後修飾を加速させることが期待され、製薬、化粧品、バイオテクノロジー分野への応用が期待される。

一般的に炭水化物は生物学的プロセスに不可欠な役割を果たし、糖鎖を付加することで望ましい機能がしばしば追加される。こうした背景から、これまで炭水化物とその誘導体の合成に多くの努力が払われ、糖をベースにした医薬品やスキンケア成分、その他の有用な製品の開発が行われてきた。一方で、目的の物質を合成するためには、化合物の特定の部位だけを反応させるために保護基を用いる必要があったり、過剰な廃棄物を発生させる条件が必要であったりという課題があった。

研究チームは、自然界に存在する、炭水化物に部位選択的に糖鎖を付加することができるグリコシルトランスフェラーゼという酵素に注目した。この酵素から着想を得て、生物模倣した化学的アプローチを設計した。この方法では自然界と同様に、1回の操作で天然の糖を配糖体に変換することができる。

研究チームを率いるNUS化学学科のコー・ミン・ジュー(Koh Ming Joo)准教授は、「私たちは、生体模倣した化学的アプローチの活用が、保護基の利用を必要としない炭水化物や複合糖類の合成を近代化すると信じています。これによって、コストや時間、人的資源の削減、研究者による迅速な糖鎖へのアクセス、完全に保護されていないグリコシル基を生体システムに導入するための実用的なプラットフォームの提供など、大きなメリットをもたらすでしょう」と期待を述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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