2024年08月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2024年08月

3D構造の圧電ポリマー開発、環境発電への道を開く シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は7月4日、NTUの研究チームが、3Dプリンターを用いて伸縮性をもった圧電ポリマーを開発し、人間の指の曲げ伸ばしといった動作で発電を行う環境発電パッチを作製したこと発表した。研究成果は科学誌Advanced Energy Materialsに掲載された。

研究チームは、柔らかい握り指に環境発電パッチを取り付け、指をさまざまな角度に曲げたときにパッチが異なる電圧を生成するかを調べた
Credit: Wiley-VCH(出典:NTU)

環境発電に活用される圧電性ポリマーの薄膜は、押したり伸ばしたりすることで電気が発生することから、ウェアラブル端末に電力を供給するための理想的な材料である。ただし、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のようなある種の圧電性ポリマーは伸縮性が悪く、発電能力に限界があった。

NTU材料科学工学部の副学長(国際交流担当)であるリー・プイ・シー(Lee Pooi See)氏が率いる研究チームはこの問題に対処するため、オーセチック構造(織物のようなパターン構造)に着目した。研究チームは電子デバイスの保護膜として使用されるウレタンジアクリレート製のオーセチック構造を3Dプリンターで作製し、PVDFの薄膜と金電極に重ね合わせた環境発電パッチを開発した。

この構造により、曲げるとドーム状のカーブが形成され、PVDFが通常より伸縮することで電気が発生する。実験では、オーセチック構造を持つパッチは、構造を持たないパッチよりも8.3倍高い電圧を発生することが分かった。

研究チームは、このパッチを肘や足首など、身体のさまざまな関節に貼り付け、パッチの曲がる角度により異なる電圧が発生することを明らかにした。この研究は、しなやかな動きを可能にするソフトロボティクス分野のセンシングや人の関節の動きや歩行をモニターする医療診断用の自己発電デバイスの開発に道を開くものと期待される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る