2024年08月
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COPDの真菌リスク、アレルゲンスクリーニングツール開発へ シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は7月9日、NTUリーコンチアン医科大学(LKCMedicine)の研究チームが、人工アレルゲンは肺疾患における真菌リスクがある患者を特定する上で、天然アレルゲンよりも優れていることを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌European Respiratory Journal誌に掲載された。

研究チームは、アスペルギルス・フミガーツス由来のアレルゲン(シャーレの写真)と他の真菌由来のアレルゲンを比較した
Credit: LKCMedicine (出典:NTU)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、気道が狭くなり、呼吸が困難になる肺疾患である。ある特定のCOPD患者は、真菌粒子のような環境中のアレルゲンに反応し病状を悪化させる。

現在、免疫反応に感作性を持つ患者を特定するため、真菌から直接抽出した粗製アレルゲンと天然アレルゲンが、臨床の現場で使用されている。ただし、この方法はアレルゲンのリスクを持った患者をすべて特定するには十分な特異性を持っていない恐れがあり、精査中である。これに対して、人工的に精製した組換えアレルゲンは、こうした問題を理論的に克服することができるが、そのほとんどは未検証のままである。

LKCMedicineの副学部長(研究担当)であるサンジャイ・ハレシュ・チョティマル(Sanjay Haresh Chotirmall)准教授が率いる研究チームは、シンガポールやマレーシア、香港のCOPD患者約600人を対象に、天然および人工の真菌アレルゲン35種類のテストを行った。

その結果、空気中や土壌中に存在するアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)のアレルゲンに敏感な患者は、他の真菌アレルゲンが原因の患者に比べて、突発的な再発症を頻繁に経験していることが分かった。

また、天然のアスペルギルス・フミガーツスのアレルゲンに感作されない多くのCOPD患者が、いくつかの人工的なアレルゲンに感作されることが分かった。この知見は、アレルゲンに対して潜在的なリスクのある患者をより正確に同定するスクリーニングツールになる可能性を示唆している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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