シンガポール国立大学(NUS)は8月7日、天然アミノ酸である5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)のサプリメントが高齢者の睡眠の質を改善し、腸内細菌叢の構成を調整するのに役立つことを発見したと発表した。研究結果は、学術誌Clinical Nutritionに掲載された。
2022年に発表された精神衛生研究によると、シンガポールの65歳以上の高齢者の17%近くが睡眠の質の低下に苦しんでおり、慢性疾患や認知機能障害のリスクが高くなることにつながっているという。
研究者チームは、65歳以上の高齢者30人を対象に12週間にわたる臨床試験を実施し、5-HTPサプリメントが高齢者の睡眠の質と腸内細菌叢に与える影響を調べた。参加者から採取した生体サンプルを分析した結果、睡眠不足の人々において、サプリメント摂取後に腸内細菌の種類と数が大幅に増加していることが確認された。この結果から、5-HTPの摂取によって腸内環境が改善したことが、睡眠の質の向上につながっている可能性が示唆された。
NUSのクラリンダ・ナタリア・スタント(Clarinda Nataria Sutanto)博士は、「5-HTPは、体内でセロトニンに変換され、脳内で神経伝達物質として働きます。5-HTPを補給することで、睡眠覚醒サイクルの調整に関与する神経伝達物質のレベルを調整し、睡眠の質を高め、眠気を促進できます」と述べた。また、キム・ジョンウン(Kim Jung Eun)助教授は、「この睡眠促進効果が特に睡眠の質が低い個人で顕著に観察されたことは注目に値します。薬物療法よりも安全な食事療法を用いて睡眠を改善することを支持する結果となりました」と、研究結果の重要性を強調した。
研究チームは今後、さまざまなタンパク質源からの摂取効果や、腸の健康に影響を与える可能性のある他の食品が睡眠の質に与える効果を比較し、さらに効果的な食事療法を探求することを目指している。また、若年層を対象とした研究の拡大も視野に入れている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部