2024年10月
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デング熱回復者の長期的合併症リスクはCOVID-19より高い シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は8月26日、NTUリーコンチアン医科大学(LKCMedicine)が主導する研究チームが、国内の研究で、デング熱に感染して回復した人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染して回復した人と比較して、1年後に長期的な健康上の合併症に直面する可能性が高いことを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Journal of Travel Medicineに掲載された。

LKCMedicineで感染症モデリングの研究を行うリム・ジュエタオ(Lim Jue Tao)助教授
(出典:NTU)

COVID-19に感染し回復した人と比較し、デング熱に感染した人は不整脈や心臓病、血栓などの心臓合併症のリスクが55%高かった。この研究では、2021年7月~2022年10月の期間に、シンガポールでデング熱に感染した1万1707人の住民とCOVID-19(デルタ株とオミクロン株)に感染した124万8326人の検査と医療請求記録に基づき、感染後31~300日後に現れた心臓、神経系、免疫系に関連した新たな健康障害を調べた。

研究は、LKCMedicine、シンガポール保健省、シンガポール総合病院、シンガポール国立感染症センター、シンガポール国家環境庁の研究者らによって実施され、デング熱感染後の合併症の長期的リスクを初めて検討したものであり、デング熱患者とCOVID-19患者の回復後のリスクを初めて対比させたものでもある。研究チームは、調査期間中にデング熱とCOVID-19が蔓延していたことが、比較のためのまたとない機会になったと述べている。

本研究の著者であるLKCMedicineで感染症モデリングの研究を行うリム・ジュエタオ(Lim Jue Tao)助教授は、「気候変動に起因したデング熱の地理的範囲の拡大が本研究の動機です。デング熱は、世界で最も一般的な媒介感染症の一つであり、デング熱に起因する長期的な健康問題は、患者と国の医療負担を大幅に増加させる可能性があります。また、COVID-19で回復した人と比較することにしたのは、これまで研究でCOVID-19の長期的な健康上の合併症リスクが示唆されていたためです。われわれの研究は、デング熱を予防する必要性を強調しており、公衆衛生計画を支援するための基礎情報になり得ると考えています」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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