2024年11月
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合成生物学が導く未来に向けて前進するシンガポール国立大学

シンガポール国立大学(NUS)は10月28日、合成生物学の分野に今後6年間で約1億2000万シンガポールドルと推定される多大な資源と労力を投入し、合成生物学(シンバイオ)をNUSにおけるイノベーション・エコシステムの柱として位置づけ、さまざまな分野に変革をもたらすことを目指すと発表した。

合成生物学を活用して製造されたモノマーを取り入れたハイブリッド繊維製品を紹介するNUS副学長(研究・技術担当)のリウ・ビン教授(右)とSynCTIディレクターのマシュー・チャン准教授(左)
(出典:NUS)

これまでの製造業は石油化学製品に大きく依存しており、気候危機の主な原因となってきた。合成生物学は、より効率的で持続可能なプロセスや製品を生み出す生物学的「工場」の設計とエンジニアリングを可能にし、化学産業をより環境に優しい未来へと導くゲームチェンジャーとして台頭しつつある。関連する分野は食品、繊維、香料、燃料など多岐に渡る。

NUS副学長(研究・技術担当)のリウ・ビン(Liu Bin)教授は「NUSは、合成生物学エコシステムを強化・拡大する取り組みに邁進しており、シンガポールを食料安全保障、エネルギーレジリエンス、持続可能な開発といった世界的課題に取り組む最前線に位置づけています。合成生物学においてこれまでの成果を超え、新たな高みを目指すことに深くコミットしています」と語る。

NUSの合成生物学エコシステムにおけるイノベーションの推進役は、分野の黎明期であった2014年に設立されたNUSヨンローリン医学部の臨床と技術の革新のための合成生物学(SynCTI)だ。NUSは、合成生物学主導の未来を実現するために2つの大胆な試みを始める。1つ目は、シンガポールのバイオマニュファクチャリング部門を発展させるため、新たな国家的シンバイオ・イニシアチブ設立の主導だ。このイニシアチブでは国内の学術機関、研究機関と連携し、グリーン製造の実践を推進する上での合成生物学の可能性を引き出す全国的な取り組みを推進する。2つ目は、強力な相乗効果を生み出すことを目的とした、合成生物学の世界的なリーダーたちとの研究協力だ。米国のイリノイ大学アーバナシャンペーン校(UIUC)、中国の上海交通大学(SJTU)、フランス国立科学研究センター(CNRS)と連携する予定だ。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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