2025年09月
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AI対応で捜索救助用サイボーグ昆虫の自動組立ラインを開発 シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は7月28日、マダガスカルゴキブリに小型電子バックパックを自動装着し、捜索救助用のサイボーグ昆虫を大量生産できる世界初の自動組立ラインを開発したと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

(出典:NTU)

NTUの佐藤裕崇教授が率いる研究チームが開発したこの自動組み立てラインは、マダガスカルゴキブリに電子バックパックを1分8秒で取り付けることができる。従来は熟練作業者が1匹あたり1時間以上かけて装着していたため、約60倍の効率化を実現した。AI対応のこの仕組みはコンピュータービジョンと独自のアルゴリズムにより、電極埋め込み位置を正確に特定し、正確な配置を保証する。また今回開発した新設計のバックパックは従来比25%低い電圧で制御可能となり、動作時間の延長と過剰刺激リスクの低減に役立っている。

試験では、サイボーグ昆虫が急旋回や速度調整を行いながら障害物の多い空間を移動し、4匹で10.5分間に多くの障害物を配置したテストエリアの80%以上を探索することに成功した。2025年3月には、シンガポール民間防衛隊(SCDF)のライオンハート作戦に参加し、ミャンマー地震被災地で初めて実戦投入された。従来型ロボットでは困難な災害被災地での生存者捜索の可能性が示された。

同教授は「現実の現場で大量配備するためには量産インフラが不可欠であり、この組立ラインはその第一歩です。大規模な土木構造物の欠陥検査など、より信頼性の高いサイボーグ応用への道を開くものと信じています」と語った。今後は地元企業と協力し、改良と産業利用の実証を進める予定となっている。本研究は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のムーンショット型研究開発事業の支援を受けて進められた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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