シンガポール国立大学(NUS)は、研究者らが蒸着法を用いて、産業用シリコンウエハー上でペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池の高温下および長時間動作時の安定性を大幅に向上させる手法を開発したと発表した。研究成果は学術誌Scienceに掲載された。

ホウ・イー(Hou Yi)助教授と研究チームは、優れた動作安定性を備えたペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池を商業生産できる新たな蒸着法を開発
ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池は高い変換効率が報告されてきた一方、屋上や太陽光発電所、産業施設などで使用するためには、長期間にわたる高温や強い日射といった条件に耐える必要があり、実際の製造に用いられる工業用シリコンウエハー上での長期安定性の実証が重要とされてきた。NUSの研究チームは今回、商用太陽電池製造で実際に用いられているマイクロメートル単位のテクスチャ加工を施した工業用シリコンウエハーに対し、蒸着法を初めて適用し、高品質なペロブスカイト層の形成に成功した。

NUSの研究者らが開発した新たな蒸着法は、製造上の主要な障壁を克服し、これまでに報告された中で最も耐久性の高いペロブスカイト-シリコンタンデム太陽電池の一つを実現。実用化への道を開いた
この手法により、工業用テクスチャシリコンウエハー上でコンフォーマルなペロブスカイト成長が可能となり、30%を超える電力変換効率と高い動作安定性が確認された。蒸着によって作製されたタンデムデバイスは、1sun照射下、85℃という条件で連続照射1000時間を超えて安定した動作を示し、出力が初期値の90%に低下するまでの時間(T90)は1400時間を超えた。

シリコン表面に結合しペロブスカイト前駆体分子が均一な薄膜を形成することを可能にする特殊分子を設計。これにより高温下でも安定性を維持するペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池が生み出された
(提供:いずれもNUS)
本研究は、NUSデザイン・工学部化学・生体分子工学科に所属し、同大学太陽エネルギー研究所(SERIS)でペロブスカイト系多接合太陽電池研究グループを率いるホウ・イー(Hou Yi)助教授が主導した。研究チームは、蒸着工程において有機前駆体分子が均一に吸着しにくいという課題に対し、シリコン表面に結合する特殊な分子を設計し、膜形成時の化学バランスを保ったとしている。
(2025年12月19日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部