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【26-017】黄金発展期を迎えたブレイン・マシン・インターフェース産業(その2)

李 均(科技日報記者) 2026年02月18日

研究室から手術台へ、技術プロトタイプから臨床製品へ。中国のBMI産業は発展の機会を迎えており、「政策・標準・技術・産業・臨床」が協調して発展する「黄金の開発期」へと加速している。

その1 よりつづき)

産業クラスター効果の形成が加速

 技術の発展に伴い、関連産業も徐々に立ち上がりつつある。

 2025年3月、中国の国家医療保障局はBMI新技術の価格設定について専門項目を設定し、関連する医療費請求の枠組みが整備された。同月、湖北省医療保障局が中国国内初のBMI医療サービス価格を発表。これは、この先端技術が民生分野への一歩を踏み出し、患者に希望の光をもたらしたことを示している。その後、浙江、江蘇、広東、北京などの省・市でも関連する料金項目が設定された。

 BMIがより広く医療・生活領域へ展開していくには、産業の高度化を促し、脳科学イノベーションのエコシステムを形成することが避けて通れない。

 上海新虹橋国際医学センターでは、中国初のBMI未来産業集積区「脳智天地」が一定の規模を形成し始めている。ここでは科学者、企業家、医師が近接して活動し、臨床ニーズを牽引力とし、学際的融合を道筋とし、イノベーション・エコシステムを基盤とする発展の枠組みが明確になりつつある。格式塔(上海)生命科技有限公司の創業者兼CEOである彭雷氏は、「ここには上下流のサプライチェーンが集まっており、間もなく規模化と集約化の効果が見られるだろう」と語る。

 2025年以降、上海は100億元(1元=約23円)規模の未来産業基金を注力ポイントとし、未来産業の新たな展開を強化している。上海未来産業基金の投資総監である劉通氏は、「『科学技術・資本・臨床』が深く融合した新しいモデルを創り出したい」と意気込む。

 動きを見せているのは上海だけではない。

 北京市昌平区は、2030年までにBMI産業のイノベーション能力と総合実力を世界トップクラスに押し上げ、新たな100億元規模の未来産業クラスターの形成を目指すと明言した。粤港澳大湾区(広東・香港・マカオ・グレーターベイエリア)BMIイノベーション産業連盟もこのほど発足し、大湾区および周辺地域の企業、病院、大学などが協力してリソースを統合し、世界的なBMIイノベーション拠点を構築しようとしている。江西省は、贛江新区をBMI産業の中核拠点とし、江西BMIリハビリセンターと脳波業界の高品質データセットの建設を進めている......。中国国内で、BMI産業のクラスター効果が急速に形成されつつある。

多角的な応用エコシステムの構築

 取材に応じた専門家らは、政策支援の継続、技術基盤のさらなる強化、市場需要の顕在化に伴い、2026年はBMI産業が多分野の技術融合、臨床の大規模導入、シナリオの多角化拡大を迎える重要な1年になると見ている。

 技術面でのブレイクスルーは単なる技術的飛躍ではなく、多分野が深く協調・融合するイノベーション・エコシステムを形成できるかにある。2025年5月、浙江大学医学院附属第二医院は複数の研究機関と共同で、全国初の閉ループ脊髄神経インターフェース埋め込み手術に成功し、対麻痺患者の自律歩行を支援した。

 執刀医である浙江大学医学院附属第二医院神経外科主任医師の朱君明氏は、「研究チームはコンピューターサイエンス、材料科学、臨床医学など複数分野の技術を融合させた。多分野の統合を通じて、侵襲型BMIの全産業チェーンで独自化を実現する目標へと進んでいる」と語った。

 最近は、イノベーション成果の発表が相次ぎ、新技術が研究室から臨床へと急速に移行しつつある。

 このほど、明視脳機科技(蘇州)有限公司は、自社開発の植込み型BMIによる視覚再建システムを発表し、視覚障害のある患者に「視力回復」の新たな可能性をもたらすとした。

 中国科学院脳科学・知能技術卓越イノベーションセンターが関連機関と協力して展開している2例目の侵襲型BMI臨床試験が新たな進展を見せた。技術的には、2次元スクリーン上のカーソル制御から、3次元の物理世界におけるインタラクションへの大きな転換を実現した。

 上海脳虎科技有限公司は、自社開発した中国初、世界で2番目となるバッテリー内蔵の完全埋め込み・完全無線・全機能型BMI製品が、初の臨床試験に成功したと発表した。同製品を埋め込んだ対麻痺患者とのゲーム対戦において、同社の創業者兼首席科学者の陶虎氏が敗れたという。陶氏は、「我々は、BMIが技術を誇示するための道具ではなく、生命と希望を繋ぐ懸け橋であると固く信じている」と述べた。

 2026年には、一部のBMI機器が量産段階に入り、利用シーンの多様化した応用エコシステムが徐々に形成され、大規模な商用化への道が開かれるとみられる。

 上海全瀾科技有限公司が開発した経頭蓋電気刺激治療システムは、2027年から28年の発売を予定している。現在、同社は2つのルートでの普及を開始した。院内ルートでは3~5年で100の病院への導入を目指し、院外では各種クリニックや健康・リハビリ施設などと協力し、500~1000カ所のサービス拠点を展開する。

 深圳鵬脳科技有限公司が開発した2チャンネル脳波収集ヘッドバンドは、子供の集中力向上や高齢者の認知リハビリテーションなどのシナリオへの応用が期待されており、科学教育分野への応用も可能で、近く市場に投入される。

 臨床での大規模導入、シナリオの多角化拡大、エコシステム構築の協調的推進に伴い、BMI産業は「黄金期」が到来しつつあるようだ。


※本稿は、科技日報「脑机接口产业迎来"黄金发展期"」(2026年1月5日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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