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【26-019】基礎研究の特性に合った助成メカニズムの構築を(その1)

阿儒涵(中国科学院科学技術戦略諮問研究院研究員) 2026年02月20日

 現在、基礎研究への助成は多くの現実的課題に直面している。基礎研究の特性に適合し、オリジナルイノベーションを喚起する助成メカニズムを合理的に構築することは、政府の科学技術助成、特に基礎研究助成において早急に解決すべき政策課題となっている。

「第15次五カ年計画(2026−30年)」(十五五)の提言では、基礎研究の戦略性、先見性、体系性を強化し、基礎研究への投入比率を高め、長期にわたる安定した支援を拡大する方針が示された。

 基礎研究は、高水準の科学技術における自立自強を実現し、新たな質の生産力を牽引する中核的な原動力である。いわゆる「百年に一度とも言われる大きな変化」とされる今日の大変革期において、基礎研究は科学技術イノベーションの源泉としての戦略的地位を一層高めている。しかし、基礎研究への助成は多くの現実的課題に直面している。その特性に合致し、オリジナルイノベーションを引き出す助成メカニズムを合理的に構築することは、政府の科学技術助成、とりわけ基礎研究助成において早急に解決すべき政策課題となっている。

基礎研究助成が直面する三つの課題

 基礎研究は一見すると「役に立たない学問」に見えるという人もいるが、実は大きな応用価値を生み出す母体でもある。基礎研究への助成は、その発展の特性に左右されるだけでなく、外部の制度、環境、政策によっても制約を受ける。現在、各国の基礎研究助成は共通して三つの現実的課題に直面している。

 第一に、オリジナルイノベーションがますます困難になり、基礎研究の参入障壁が高まっていることがある。知識の蓄積が膨大化し、「知識負担」が重くなる中で、オリジナルイノベーションの成果は生まれにくく、数も減少している。研究によれば、1950年代以降、複数の分野で論文や特許の破壊的指標は年々低下し、研究者が最初の特許を生み出す平均年齢は年々上昇している。基礎研究の参入障壁はますます高くなり、高水準の基礎研究活動は少数のトップ大学や研究機関に集中し、全体としては漸進的イノベーションや応用研究に偏りがちである。

 第二に、制度環境がオリジナルイノベーションの阻害要因となっていることがある。財政資金のアカウンタビリティ(説明責任)メカニズム、文献計量指標に主導される評価メカニズム、研究者の雇用・評価メカニズムが、オリジナルイノベーションに影響を与える三大要因とされている。助成機関は説明責任の圧力により、ハイリスク研究への支援を控え、ピアレビューメカニズムも合意の得られやすい研究を選別する傾向がある。文献計量指標は一部成果の定量化を可能にしたが、指標への過度な依存は本来のイノベーションを抑制する可能性がある。「アップ・オア・アウト(昇進か退職か)」に代表される研究者雇用制度は、研究者に「短期間で出せる成果や、実績を上げやすい成果」を求め、腰を据えた独創的研究を困難にしている。

 第三に、「少ない資金で大きく確実な成果を上げる」ことへの圧力が増大していることがある。世界の経済環境や地政学的情勢の変動など複合的要因により、各国で科学技術、特に基礎研究への追加的財政資金が逼迫している。一方で、経済・社会の発展が基礎研究やオリジナルイノベーションに求める需要は急速に高まっている。限られた資金の下で助成効率をいかに高めるかが、重要な課題となっている。

イノベーション効率を左右する助成メカニズム

「誰が助成するのか」「何を助成するのか」「どのように助成するのか」という三つの中核的課題について、近年は大規模なデータ分析と国際比較研究が進められ、助成メカニズムがイノベーションに深い影響を及ぼすことが明らかになっている。

 助成主体の面では、民間財団と公的財団の間に明確な差異が見られる。民間財団は、非コンセンサス型でハイリスクな研究を支援する傾向が強い。英国のバイオメディカル分野における民間・公的財団の助成の差異を分析した研究によれば、民間財団の助成は「老木に新芽が出る」ような特徴を示し、従来型テーマを支援しつつも革新的成果を生み出している。一方、公的財団では「新しい瓶に古い酒を入れる」現象が見られるといい、申請段階では新しい概念を掲げるものの、成果は従来型テーマにとどまる傾向がある。

 助成対象の面では、「人に助成する」モデルと「アイデアに助成する」モデルがそれぞれ異なる特徴を持つ。海外助成機関の事例研究によると、人への助成は破壊的・独創的成果の創出に有利とされる。しかし一方で、さらなる業績評価の圧力が加わると、論文数や被引用数、獲得プロジェクト数といった従来型指標は増えるものの、オリジナルイノベーション能力を測る破壊的指数では、アイデア助成型よりも劣るとの研究結果もある。

 助成方式の面では、安定的予算配分と競争的プロジェクト助成が現在広く採用されている二つのモデルである。日本の化学分野における2つの助成モデルの成果の違いを分析した結果、競争的助成は研究対象が分散し、安定的予算配分は比較的集中していたという。安定的予算配分はニッチなテーマに目を向けやすく、競争的助成は人気のテーマに注目しやすい。また、継続助成は競争的助成の安定性を高める手段として用いられている。米国国立衛生研究所(NIH)による40年にわたる実証分析では、継続助成を受けた研究者は研究テーマを変更する確率が低く、特定課題に集中して取り組む傾向があり、同時に研究の革新性も高いことが示されている。

その2 につづく)


※本稿は、科技日報「构建适应基础研究规律的资助机制」(2026年1月20日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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