【26-020】基礎研究の特性に合った助成メカニズムの構築を(その2)
阿儒涵(中国科学院科学技術戦略諮問研究院研究員) 2026年02月24日
基礎研究への助成は多くの現実的課題に直面している。その特性に合致し、オリジナルイノベーションを引き出す助成メカニズムを合理的に構築することは、政府の科学技術助成、とりわけ基礎研究助成において早急に解決すべき政策課題となっている。
(その1 よりつづき)
ミッション志向型助成に共存する機会と懸念
ミッション志向型助成は、「大規模科学で大きな問題・課題に対応する」ための体系的な介入策として位置付けられている。一般に国家安全保障や経済・社会の発展ニーズを対象とし、トップダウンで課題を設定し、方向性を持たせた助成を行う手法である。近年、各国政府はこの方式をますます重視している。米国は「CHIPS・科学法」を通じて、国立科学財団(NSF)に基礎研究と使命の連結を推進させ、EUの「ホライズン・ヨーロッパ」計画もミッション志向の手法を一貫して採用している。日本も科学技術振興機構(JST)などを通じ、戦略的基礎研究計画を推進している。この流れの中で、研究者も助成動向の変化を実感している。2025年に113カ国、3234人の研究者・研究リーダーを対象に行われた調査では、67%が研究重点がよりミッション志向になったと回答し、50%が現在の助成環境では研究に明確な意義が求められると答えている。
ミッション志向型助成は資源を結集し、重要課題を攻略する上で大きな効果を持つ一方、自由探索型研究に対しては複雑な影響を及ぼす可能性がある。例えばある研究では、ミッション志向型助成が、自由探索型研究の関心をミッション志向型の研究テーマへ向けさせるという、積極的な「誘導効果」を持つことが実証されている。ところが、同一分野でミッション志向リソースが大量投入されると、自由探索研究の成果量やオリジナルイノベーション能力が低下する「押し出し効果」が生じる可能性もある。このため、ミッション志向型と自由探索型助成のバランスが、助成の制度設計の鍵となる。
オリジナルイノベーションを活性化する助成エコシステムの構築
「十五五」を見据え、基礎研究が中国の科学技術自立自強を支える役割を果たすためには、研究の法則を尊重し、助成体制の体系的改革を進める必要がある。
第一に、多元的かつ協調的な投資構造を構築する。財政投入の安定的成長を確保しつつ、企業、社会資本、民間財団による基礎研究投資を積極的に誘導し、多様な助成理念と方式が共存するエコシステムを育成し、ハイリスクのオリジナルイノベーションに多様な支援チャネルを提供する。
第二に、差別化された助成戦略を実施する。探索性が高くリスクの大きいアイデア型研究については、より幅広く受け止める姿勢を強め、非コンセンサス型プロジェクトの審査チャネルを設ける。有望性が確認された研究テーマについては、効率的な継続助成メカニズムを構築し、長期にわたる安定した支援を提供する。そのうえで、科学者が腰を据えて地道な研究に取り組み、未踏領域に果敢に挑める環境を整える。
第三に、計量指標への依存を弱め、イノベーションとミッションの観点に基づく評価を前面に出す。論文数やインパクトファクターなどの計量指標を軸にした単純な定量評価を改め、研究者の評価では、イノベーション能力、学術的貢献、研究倫理を重視し、着実に研究に取り組む「真の科学者」を選抜する。研究機関や助成機関の評価では、戦略的な重点配置、資源配分能力、マネジメントの有効性を重視し、評価を課題の本質に立ち返らせる。
第四に、ミッションによる牽引と自由探索型研究のバランスを動的に調整する。ミッション志向型プロジェクトは「基盤構築と先端開拓」の役割に位置付ける一方、国家レベルの科学技術計画では、相当割合の資金を科学者の自主的テーマに充て、研究エコシステムの多様性と持続性を保障し、短期的な功利志向が長期的なイノベーション基盤を損なうことを防ぐ必要がある。
基礎研究は科学技術自立自強の根幹と言える。新たな情勢と課題に直面する中で、より体系的で包容力があり、先見性に富む制度設計によって助成体制を改革・改善し、研究者の創造力を解き放つことが求められる。そうした取り組みを通じて、世界を先導する独創的成果の創出とトップレベルのイノベーション人材の育成に向けた制度的基盤を築き、新たな科学技術革命と産業変革の中で先機をつかみ、未来につなげていく必要がある。
※本稿は、科技日報「构建适应基础研究规律的资助机制」(2026年1月20日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。
