二酸化炭素による「発電」は夢ではない(その2)
陳 瑜、呉葉凡(科技日報記者) 2026年03月04日
2025年12月、超臨界二酸化炭素(CO2)発電ユニット「超炭1号」が、貴州省六盤水市の首鋼水鋼集団で商業運転を開始し、「CO2による発電」という夢が現実のものとなった。
(その1 よりつづき)
百層プレートの「接合」
マイクロチャネル加工は第一歩にすぎない。上下にプレートを積み重ね、溝を向かい合わせて初めて超臨界CO2の流路が形成される。数百枚のプレートを積み上げ、各層の微細流路を寸分違わず密着させて溶接するのは、熟練の職人でも容易ではなかった。
中国核工業集団の首席科学者で、超臨界二酸化炭素(CO2)発電ユニット「超炭1号」のチーフデザイナーでもある黄彦平氏は、資料をくまなく調べ、真空拡散溶接技術に注目した。黄氏は、「プレートを本のページのように一枚ずつ重ね、真空高温高圧条件下に置くことで、金属原子が拡散し『手を取り合うように』強固に結合する」と説明した。
解決策は見つかったものの、当時、中国国内では真空拡散溶接技術の蓄積はほとんどなかった。研究開発チームメンバーの唐佳氏は、「溶接機の設計ができず、国内での加工も不可能なので、海外メーカーに頼らざるを得なかった」と述べる。
黄氏は2017年、チームを率いて、当時唯一製造能力を持っていた海外メーカーを視察に訪れた。ところが、そこで待っていたのは「門前払い」だった。
黄氏は、「前後して計4回にわたり人を派遣したが、実験室の扉すら入れてもらえず、機械の外観を見るしかなかった。最後の1回は、ようやく入口までたどり着いたが、『世界で3人しか入れない』と言われ、追い返された」と振り返った。
ほどなくして、真空拡散溶接技術は海外の商業管理リストに加えられ、輸出が厳しく制限されたため、入手が難しくなった。技術を厳重に囲い込まれる中で、黄氏は、「売ってもらえないのなら、自分たちでやるまでだ」と腹をくくった。
実験室の灯りが昼夜消えることのなかった829日間、チームは27回にわたる技術案の最適化を重ね、記録帳に書き込まれた溶接パラメータは累計218版に及んだ。廃棄された試験サンプルは、倉庫の半分を埋め尽くした。
そして2021年の厳冬の未明、49回目の工程試験で、監視画面に安定した緑色の曲線が突然現れた瞬間、劉氏は震える手で眼鏡を直し、点滅するデータを何度も確認した。「溶接が成功した」。その一言と同時に、2年間抑え込まれてきた歓声が工場中に響き渡った。
黄氏はその日、微細流路の拡散溶接式熱交換器の表面をそっと撫で、「ここを流れているのは二酸化炭素だけではない。研究者の気概だ」と声を震わせた。
現在、「超炭1号」は、単一コアとして世界最大の長さを持つ微細流路の拡散溶接式熱交換器を備えているだけでなく、従来の多管式熱交換器と比べ、伝熱面積が33%、熱負荷が27%向上し、体積は10分の1にまで小型化された。さらに、付帯する真空拡散溶接装置の主要性能指標も、国際的な同種製品を全面的に上回っている。
超臨界流体を「封じ込める」
「三器」の試練を乗り越えた後、チームは勢いそのままに「二機」の難題に挑み続けた。
圧縮機とタービンの軸端には密閉のための隙間が存在する。そこから超臨界CO2が「逃げ出し」、装置のエネルギー損失を招かないようにするにはどうすればよいのか。最初に思い浮かんだのは、蒸気発電でも一般的に用いられるラビリンスシール方式だった。チームメンバーの陳堯興氏は、「しかし、この案はすぐに否定された。超臨界CO2用の圧縮機とタービンは構造寸法が小さい上、高温・高圧・高速回転という条件下で運転されるため、ラビリンスシールでは目的を達成することが難しい」と説明した。
当時、海外にはすでにいくつかの成功事例があった。黄氏が海外に行って相談すると、外国の専門家からは、「100キロワット(kW)以上のユニットは作るな」という一言だけを告げられた。黄氏がメガワット級のユニット作りを目指していると聞くと、彼らは考えもせずに首を横に振り、「あり得ない」と笑った。
それでも黄氏は引き下がらなかった。「私は少し頑固な性格で、他人に無理だと言われるほど、どうにか解決策を見つけたくなる」と言う。
どの材料を使うのか、どの構造を採用するのか。チームは糸をたぐるように一つ一つ分析を進めた。ブラシシール、ホールシール、ハニカムシールなどを比較試験した末、最終的に「ゼロ漏洩」とうたわれるドライガスシール技術を採用することを決めた。
陳氏は、「ドライガスシール技術は比較的成熟しているが、『超炭1号』の高温・高圧という過酷な条件では、そのまま流用することはできなかった」と語る。
再びゼロからの挑戦となった。静止から回転へ、低温から高温へ、低圧から高圧へ。実験室では、チームメンバーが制御画面を食い入るように見つめ、実験状態を常に監視していた。
100℃上がるごとに一つの関門が立ちはだかる。温度を上げるたび、陳氏は、「必ず安定させろ、絶対に漏らすな」と心の中で繰り返し念じた。
超臨界CO2が空気に触れた瞬間は非常に美しく、きれいな雪のような結晶が噴き出す。陳氏は、「だが、これは私たちが最も目にしたくない光景だ。それが見えたら終わりで、漏洩を意味する」と苦笑いしながら両手を広げた。
500℃に達しようとするその瞬間、実験室の空気は凍り付いたかのように感じられ、陳氏の心臓は激しく鼓動していた。
「漏れなし、安定!」。結果が告げられた瞬間、チームにのしかかっていた重荷がようやく下りた。黄氏は、「私たちはメガワット級の超臨界CO2タービンでドライガスシールを実現した。世界で初めての事例だ」と述べた。
2009年の紙切れ一枚をきっかけに、2019年に実験室での検証に成功。2023年に「超炭1号」プロジェクトが正式に始動し、2025年12月には商業運転にこぎ着けた。黄氏はチームを率い、十数年にわたり研究開発を継続し、超臨界CO2発電技術の実用化に向けた成果を積み重ねてきた。
※本稿は、科技日報「二氧化碳"发电"不是梦」(2026年1月27日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。
