ミイラはエジプトだけのものではない。古代中国でも、水銀、朱砂、そして海上シルクロード経由の香料を用いて、遺体を芳香ある状態で腐敗させない技術が用いられていた。新華社が伝えた。
中国の考古学研究者たちはこのほど、古代DNA技術を用いて長江下流で出土した南宋時代(1127-1279年)の古代人の遺体について、ルーツと疾病感受性を研究する過程で、偶然にも「東洋のミイラ」作成に用いられた防腐香料の製法を解明した。関連する研究成果は「Journal of Genetics and Genomics」誌に掲載された。
2018年、常州市考古研究所が江蘇省常州市周塘橋地区で行った発掘調査で、800年以上前の南宋時代の古代人の遺体が出土した。考古学者たちを驚かせたのは、この古代人の遺体が良好に保存されているだけでなく、脳や内臓も完全な状態で残っており、出土直後から非常に濃厚な芳香を放っていたことだ。
南宋時代の古代人の遺体が800年以上経っても腐らず香りを保っているのはなぜか。この謎を解明するため、復旦大学研究チームは全身CTスキャン、系統解剖、古代DNA研究、安定同位体研究、防腐処理材料の検出など、多角的な総合研究を実施した。
復旦大学人類形質学研究院の博士研究員である王邦彦氏は、「私たちの調査では、水銀と朱砂が浣腸の形で直接常州の古代人の遺体の腸管に注入されていたことが判明した。南宋時代の古代人の遺体が完全な状態で保存されているのは、東アジア地域特有の防腐処理技術の賜物だ」と説明した。
水銀と朱砂は洋の東西を問わず遺体の防腐処理剤や固定剤として用いられてきたが、その具体的な使用方法は地域によって異なる。中世ヨーロッパの一部エリート層のミイラでは通常、内臓を摘出した後、空洞になった体腔に水銀を注入していたが、常州の古代人の遺体の場合は水銀を直接腸管に注入していた。また、朱砂の使用方法もエジプトやヨーロッパのミイラとは大きく異なり、皮膚表面に塗布するのではなく、腸管の末端部分に注入されていた。
復旦大学の研究チームは華東理工大学化工学院の胡静教授チームと協力し、古代人の遺体の臓器を再水和することで液体サンプルと大気サンプルを取得した。再水和後に抽出された液体サンプルは無色透明で、やはり濃厚な芳香を放っていた。分析結果によると、常州の古代人の遺体の体内主要成分は、竜涎香、竜脳香、没薬などの香料成分に加え、少量の乳香や沈香などが含まれていた。
復旦大学科学技術考古学研究院の文少卿副教授は、「防腐香料の配合比率はまだ正確に測定できていないものの、中国のミイラ作成技術に関する神秘のベールを取った」との見方を示した。
南宋時代に常州で暮らしていた裕福な有力者たちは、死後に香料を用いた防腐処理という贅沢な待遇を受けることが可能だった。これは、南宋時代の海上シルクロードにおける香料貿易が盛んだったことを反映しており、宋時代の社会生活に対する人々の理解を深めるものとなった。

(画像提供:人民網)