中国北京市昌平区大嶺溝村にある北斉時代(550~577年)の長城遺構で、考古学者による発掘調査が行われている。北京市文物局によると、明代(1368~1644年)以前の長城(いわゆる早期長城)を対象にした本格的な発掘調査は同市では初めてで、構造や施工方法、歴史的背景の解明を目指す。新華社が伝えた。
研究者は、北京における「初期長城」を、明代以前および明代初期に築かれた、土や石などの自然材料によって構成された長城と位置付けている。大嶺溝村の北東-南西方向に延びる山の尾根では、砕石を積み上げた北斉長城の遺構が低木の中にかすかに姿を現している。発掘対象の戍堡は城壁の南東側に沿って築かれ、細長い袋状に外側へ伸び、谷を見下ろす位置にある。
北京市考古研究院の副研究館員で本プロジェクト責任者の尚珩氏によると、遺跡の面積は約800平方メートルで、交通・防御上の要衝に立地し、防衛と補給の双方に適した構造を持つという。すでに烽火台(見張り台)などの遺構が確認されている。
北斉時代の長城については史料が限られており、明代の長城と比べて詳細は明らかになっていない。尚氏は、今回の発掘によって建築様式や機能配置、防御体制、当時の生活形態などに関する情報の補完を図るとしている。
大嶺溝の長城遺構は、2012年に国家文物局が北斉長城と認定した。さらに、放射性炭素年代測定などの結果により、遺跡の年代が裏付けられている。事前調査では、北斉期の特徴を持つ「指捏紋瓦」と呼ばれる瓦も周辺から出土している。
今回の調査では、新たな技術も導入されている。北京城市学院の都市遺産保護・景観計画研究所の研究チームが、地上設置型レーザースキャナーや地中レーダー、多眼魚眼式の全天球カメラなどを用いて、地表・地下構造や周辺環境のデータを収集している。
同研究所の劉蕊所長は、これらの機器により遺構を損傷させることなく地形や地下構造を把握できると説明した。例えば地中レーダーは地下約8メートルまでの地層変化を把握でき、電磁波の反射状況から版築土や石積み、瓦片などの存在を示唆する情報が得られるという。
尚氏は「長城の多くの地点では従来の発掘が難しい条件にある」とし、こうした非破壊型の調査手法の導入が必要だと指摘する。今後は実際の発掘結果と技術調査のデータを照合し、長城考古における新たな調査手法の有効性を検証するとしている。