中国科学院大連化学物理研究所の陳萍研究員率いる研究チームが、水素と金属を電極とする「気体-固体型水素負イオンプロトタイプ電池」を構築した。この電池は、水素を取り込むことで放電し、充電時には水素を放出する特徴を持つ。「水素と電力の同時貯蔵」という概念により、常温・常圧条件での高効率な水素貯蔵の実現可能性を示した。関連成果は13日付の国際学術誌「Joule」に掲載された。科技日報が伝えた。
水素負イオンは、水素が電子を余分に持つ「電子過剰状態」にある粒子で、高い反応性と高いエネルギー密度を兼ね備える。このため、次世代の全固体電池の鍵となる技術の一つと考えられている。しかし、自然条件下では極めて不安定であり、電気化学の分野で直接活用することは困難とされてきた。
同チームは2018年から水素負イオンの伝導に関する研究を進め、2023年には低温でも安定して水素負イオンを輸送できる新しい電解質材料を開発した。さらに2025年には、初の全固体水素負イオン電池の試作にも成功している。これらの成果を踏まえ、新たに「気体-固体電池」という構想を打ち出した。
今回の研究では、負極に金属マグネシウム、正極に水素ガスを用い、広い温度範囲で動作可能な電池を構築した。放電時には、正極で水素が還元されて水素負イオンとなり、負極では金属が酸化されて金属水素化物を形成する。一方、充電時には、水素分子が放出され、金属が元の状態に戻る。この仕組みにより、充放電と水素の貯蔵・放出を同時に行うことが可能となった。
研究チームはさらに、10個の電池セルを直列接続した電池パックを構築し、2.4ボルト以上の電圧を出力し、LEDの点灯にも成功した。エネルギー効率の分析では、この「水素と電力の同時貯蔵」システムの効率は93.9%に達し、従来の熱的な水素貯蔵方法と比べて約3割向上している。
この成果は、水素エネルギー利用において長年の課題であった「水素貯蔵」に対し、新たな技術的アプローチを提示するものである。従来必要とされていた高圧(約700気圧)や極低温(−253℃)といった条件に依存しない手法として、新しい水素貯蔵技術の発展につながる可能性がある。
今後は、水素負イオン伝導体や電極材料の性能向上に取り組み、実用化に向けた技術開発を進めていく方針だ。