新型コロナ後を見据えたインドDSTの科技政策の方向性

2021年7月16日 JSTシンガポール事務所

インド科学技術庁(DST)が5月に開催したウェビナー「パンデミックの反対側で...科学政策のインターフェイス(On the Other Side of the Pandemic...A Science Policy Interface)」で、インドの科学技術関係者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)終息後の世界での成長と発展のためには成長分野に科学技術の焦点を当てる必要性を強調した。概要は以下のとおり。
NITI Aayog(インド国立革新機構)のCEOのアミターブ・カント(Amitabh Kant)氏は、「COVID-19は通常の生活を破壊し、経済活動を混乱させたが、それはまた、より良い未来の希望、変化、そして約束の大きな機会でもある。これは科学技術によってのみ取り組むことができる。遠隔医療、遠隔地の村への質の高い医療、オンライン教育などである」とし、適切なCOVID-19対応手順に従い、予防接種を行うよう人々に促した。
(筆者注:インドではマスク着用、手洗い、ソーシャルディスタンスの確保などの徹底や、予防接種への偏見の解消等が課題である)
同CEOは、「ゲノム配列のような科学分野はパンデミックの時代に非常に重要であり、COVID-19を含む多くの問題の解決策を提供する。また、5Gテクノロジーは、モバイルテクノロジーの世界を急速に変革し、より高速な通信を実現する。同様に、人工知能(AI)は、インドの成長を後押しする可能性がある」と述べた。

ウェビナーの画面

同ウェビナーではDSTのアシュトー・シャルマ(Ashutosh Sharma)長官が、過去50年間のDSTの取り組みについて話し、特に、科学の強化に役立ったCOVID-19に対して過去1年間に行ったことについて紹介した。シャルマ長官はDSTが取り組んできた次期科学技術イノベーション政策2021(STIP)や自由化された地理空間データ政策(下記リンク参照)にも触れた。また、科学技術の男女格差に取り組むためのDSTのイニシアチブや、サイバーフィジカルシステム(CPS)に関する施設の設置等について説明した。

同長官は、「COVID-19の変異と健康への影響の分析を継続する。COVID-19は対策手順に従ってのみウイルスの感染を制御することができる」と強調し、インドを襲う第2波に取り組むためのスタートアップ主導のソリューションをサポートするプログラムを立ち上げたことを明らかにした。このプログラムの下で、インドが危機と戦うことを可能にするため、インドの新興企業は新しい技術や革新的な製品の開発のためにこのプログラムに応募することを奨励した。

最後に同長官は、「COVID-19第1波では、3〜4カ月で、支援を受けた100のスタートアップが結果を出した。パンデミックと戦うためのこの新しいイニシアチブの下で、すでに1か月で良い結果が得られている。我々自身の技術でインドはたくさんのことができる」とし、従来の3分の2の価格で世界品質の酸素濃縮器を開発した例を挙げた。これにより、特殊なバルブ、ゼオライト材料、小型コンプレッサー、ガスセンサーなど、いくつかの分野で、幅広い用途を持つ重要なコンポーネントの開発と製造に大きなチャンスが生まれる可能性があるという。

(筆者注:インド工科大学ボンベイ校は、COVID-19患者の治療のための医療用酸素の不足に対処するための解決策を開発した。また、インド工科大学ハイデラバード校の研究者によって開発された「世界初の手頃な価格で長持ちする衛生製品」が発売された:下記リンク参照

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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