インド気象局は、2024年4~6月に異常に多くの熱波が発生すると予測しており、早期警告システムの開発や熱波の健康リスクのマッピング、熱波の予測などの対策が研究者により進められている。科学誌nature indiaが5月17日に伝えた。
インドは3年連続で深刻な熱波(平地で40℃以上、山間部で30℃以上)に見舞われており、その社会的影響から、インド気象局は、湿度を加味した体感温度を示す「暑さ指数」を発表している。インドのバナラス・ヒンドゥ大学のティルタンカル・バネルジー(Tirthankar Banerjee)教授によると、深刻な熱波に比べ、穏やかな熱波は即座に死者を出すことは少ないが時間が経つにつれて多くの命を奪う傾向があるという。研究チームは、2008~2019年の間にインドの10都市で超過死亡率を調査し、熱波の健康リスクをマッピングし、風速、日射量、気温、湿度を考慮した早期警告システムを開発した。
インド熱帯気象研究所の気象学者であるラジブ・チャトパディヤイ(Rajib Chattopadhyay)氏は、湿性熱波と乾性熱波の両方の強度が高まっていることが明らかにした。チャトパディヤイ氏は、「地域の熱行動計画(HAP)を微調整すると熱波の影響が緩和される可能性があります。暑さストレスに応じて、屋外や屋内など、過ごす場所と時間帯を示すよう警告を調整することができます」と述べた。
2013年にアーメダバード市でインド初のHAPが開始され、現在までに、州、都市、市民団体で40近くのHAP戦略が策定されている。アーメダバード市のHAP策定に関わったインド公衆衛生研究所の元所長ディリープ・マヴァランカル(Dileep Mavalankar)氏は、「今後、暑さによる死亡者数をカウントできれば、早期警報の基準値をより適切に設定することができるでしょう」と語った。
インド工科大学ボンベイ校(IIT-B)の気候変動専門家、アルピタ・モンダル(Arpita Mondal)氏によると、1990年代後半からインド中北部で気候変動による大気の流れが変化し、熱波の持続性と長期化を引き起こしているという。モンダル氏は、「熱波のメカニズムを理解することが気象予測モデルの改善に役立ちます」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部