インド教育省は5月21日、インド工科大学ジョードプル校(IIT-Jodhpur)の研究チームが、北インドにおける有害なPM2.5(直径が2.5マイクロメートル以下の小さな粒子)に関連する健康やそれに関連する影響を効果的に減少させるためには地域の非効率な燃焼プロセスに対処することが重要だと発表した。研究結果は、学術誌Nature Communicationsに掲載された。
IIT-Jodhpurのディーピカ・バトゥ(Deepika Bhattu)准教授
(出典:PIB)
大気汚染は、世界中の何百万人もの人々に深刻な健康被害を及ぼす世界的な課題だ。IIT-Jodhpurのディーピカ・バトゥ(Deepika Bhattu)准教授が率いる研究チームは、高度なエアロゾル質量分析技術とデータ解析を用いて、デリー市内外の5つの地域で調査を行った。その結果、PM2.5の濃度は地域全体で一様に高いが、化学組成は地域の排出源と形成プロセスの違いによりかなり異なることが分かった。
デリー市内では、塩化アンモニウム、交通排気ガス、暖房、大気中で生成される化石燃料の酸化生成物から発生する有機エアロゾルが多くを占めている。一方デリー郊外では硫酸アンモニウムと硝酸アンモニウム、バイオマス燃焼蒸気からの二次有機エアロゾルが主な原因だ。また、場所に関係なく、交通排気ガスを含むバイオマスや化石燃料の不完全燃焼による有機エアロゾルが地域におけるPM2.5関連の健康被害を起こす主な要因であることが浮き彫りになった。
インドのPM2.5の酸化力は中国やヨーロッパの最大5倍も上回り、世界的に見ても最も高い数値となっている。
バトゥ准教授は「PM全体の質量を減少させれば健康への影響が軽減されるという一般的な考えとは異なり、北インドにおけるPM関連の健康被害を効果的に減少させるためには、バイオマスや化石燃料の燃焼、交通機関の排気ガスなど、地域の非効率的な燃焼プロセスに対処することが重要であることが明らかになりました。インドの大気汚染の危機に対処するためには、地域社会や利害関係者の協力が必要であり、特にデリーのような人口密度の高い都市部では社会の変革が必要です」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部