インド工科大学マドラス校(IIT-M)は7月16日、インド工科大学カンプール校(IIT-K)との共同研究チームが、人間の皮膚と同様に触感を知覚できる電子皮膚を開発したと発表した。この研究成果は、学術誌Chemical Engineering Journalに掲載された。
電子皮膚の開発に使用されてきた柔軟なポリマーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)はコスト効率が良く、圧力を加えると電荷を発生する固有の圧電性が高く、生体適合性があるためヒトの皮膚に安全に使用できるというメリットがあった。電子皮膚には、デバイスに圧力を加えることで電流を発生させる圧電(PENG)タイプと、2つの材料の摩擦によって電気エネルギーを発生させる摩擦帯電ナノ発電(TENG)タイプの2種類がある。本研究では、生体適合性があり、触れると作動する電子皮膚を作るために、生体適合性のある圧電材料の酸化亜鉛(ZnO)と、生体適合性のある導電材料である銀(Ag)粉末をPVDFに組み合わせて、単一電極摩擦帯電ナノ発電(SETENG)を開発した。この組み合わせを使用した電子皮膚は本研究が初めてである。研究チームは、圧電フィラーを使用して材料の圧電性と誘電分極を改善し、導電性フィラーを使用して空間電荷分極を高めることで、SETENGの性能を向上させた。ZnOは双極子分極を高め、Agは空間電荷分極を高めた。この素材は、人体に装着したときに優れた人体運動モニタリングを示し、毒性が無くヘルスケアモニタリングに適していることが実証された。
インド科学教育研究大学プネー校(IISER-P)のR・ブーミ・シャンカル(R. Boomi Shankar)博士は、「誘電体材料の特性を調節するために金属を添加するという実験方法が工夫されています。開発された電子皮膚は生体適合性のある材料を使用しているので、ウェアラブル端末に適しています。この技術は、人体の動きや振動センシング、遠隔運動センシングなど、エネルギーハーベスティングとストレージを含む様々な実生活に応用可能であることが証明されています。この研究は、高性能PENGとTENGの探索における新たなベンチマークを打ち立て、スマートホーム向けのマイクロエレクトロニクスに革命をもたらすものです」と、この研究の重要性を唱えた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部