インド科学技術省は1月29日、インド地磁気研究所(IIG)の研究により、地球の北磁極がカナダからシベリアへ移動したことで、地球磁気圏内の中高緯度における荷電粒子の浸透高度が変化したことが明らかになったと伝えた。
地球の磁場は、内部のコアによって生成される保護シールドであり、コンパスの指針や有害な太陽風からの防御に役立っている。この磁場は過去100年以上にわたり変化を続けており、1990年までカナダに位置していた北磁極は、徐々にシベリアへ移動し、2020年には約50km/年の速度で移動していることが確認された。この移動は、宇宙空間における荷電粒子の挙動に大きな影響を及ぼしている。
IIGの研究チームは、IGRF-13(第13次国際標準地球磁場)モデルに基づく三次元相対論的試験粒子をシミュレーションし、エネルギーの高い陽子の軌道を解析した。その結果、1900年にはカナダ地域で磁場が強く、粒子は高高度に留まる傾向があったが、2020年には北磁極がシベリアへ移動したため、カナダの磁場が弱まり、シベリアの磁場が強化されたことが判明した。
この変化により、シベリアの上空の荷電粒子が地球大気に深く侵入することができなくなり、一部の粒子の到達可能な最低高度(貫通高度)は400から1200kmにまで上昇した。これは、シベリア地域での磁場勾配の強化が、荷電粒子の軌道を外向きに偏向させ、地球への接近を防いだためである。
このような地磁気変動が粒子に及ぼす影響は、実世界にも影響を及ぼす。例えば、極軌道を通過する衛星は、荷電粒子が大気にどの程度深く浸透するかに応じて、空気抵抗の変動を経験する可能性がある。また、これらの粒子が大気の密度を変化させ、衛星の軌道にも影響を及ぼす可能性がある。今回の発見は、今後オーロラを引き起こす電子や陽子などの荷電粒子の挙動を理解し、宇宙天気の予測や衛星システムの保護に貢献する可能性がある。
1900年から2020年までの北磁極の移動。白いアスタリスクと点は、各年の各半球の最大磁場と磁極の位置を示す
(出典:PIB)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部