2025年03月
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関節リウマチ治療のための革新的な薬物送達システムの開発 インド

インド科学技術省(MoST)は2月4日、研究者らが、関節リウマチ(RA)の治療に革命をもたらす可能性がある自己作動型の薬物送達システムを開発したと発表した。研究成果は学術誌Biomaterial Advancesに掲載された。

RAは、世界で数百万人が罹患し、慢性的な炎症や痛み、回復不能な関節損傷を引き起こす。従来の治療は、薬物の全身投与に依存しており、副作用のリスクを伴うだけでなく、炎症を起こした関節から薬物が急速に除去されるため、頻繁に投与する必要があり、長期にわたる局所的な緩和が課題となっている。

インド科学技術庁(DST)傘下のナノ科学技術研究所(INST)の研究者らは、この問題の解決策を求めて、炎症を起こした滑膜周辺環境における生化学的シグナルに直接応答するスマートシステムを開発した。この薬物送達システムは、関節に存在する特定の炎症性酵素を標的とすることで、治療薬が必要な場合にのみ放出され、RA患者に、より正確で安全な治療を提供する。この薬物送達システムでは、一般的に使用されている抗リウマチ薬であるメトトレキサートを充填した微小球を使用する。微小球は、関節の炎症を感知し、必要な場合にのみ薬剤を放出するように設計されており、副作用を最小限に抑え、治療効果を向上させる。

ラフル・クマール・ヴェルマ(Rahul Kumar Verma)博士の率いる研究チームが使用した製剤は、脂質とポリマーのハイブリッド型マイクロ複合材で構成されており、脂質成分(大豆レシチン)は高い薬物封入効率を確保し、ポリマー成分(ゼラチン)はマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)に対して反応性を示す。ゼラチンはMMPにさらされると、ゼラチン基質が切断され、カプセル化された薬剤の制御されたパルス投与が行われる。

この薬物送達システムは、頻繁な薬剤注射の必要性を排除し、全身性の毒性を低減することで、現在のRA治療に、より安全で効果的な代替案を提供できる可能性がある。このシステムは、患部である関節における薬剤の有効性と滞留性を改善することで、薬剤の効果を高め、少ない用量で長期間の痛みの緩和をもたらすことが期待される。

研究デザインの概略図、ラフル・クマール・ヴェルマ(Rahul Kumar Verma)博士(中央)と研究チームメンバーら
(出典:PIB)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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