インド科学技術省(MoST)は11月5日、国家量子ミッション(NQM)の支援を受けたスタートアップ企業が、インド初となる500km超の量子鍵配送(QKD)ネットワークの実証に成功したと発表した。

この成果は、インドのベンガルールに拠点を持つ量子技術企業QNu Labs社が既存の光ファイバー網上に構築したもので、量子セキュア通信における重要なマイルストーンとなる。正式な発表は新興科学技術イノベーション会議(ESTIC 2025)の場で行われ、ジテンドラ・シン(Jitendra Singh)科学技術相、政府首席科学顧問のアジェイ・K・スード(Ajay K. Sood)教授、国家量子ミッション運営委員会議長アジェイ・チョウドリー(Ajai Chowdhry)博士、アベイ・カランディカール(Abhay Karandikar)インド科学技術庁長官らが出席した。
QKDネットワークは、インド科学教育研究大学プネー校(IISER-P)が主催する、学際的サイバーフィジカルシステムに関する国家ミッション(NMICPS)傘下の技術イノベーションハブであるI-Hub量子技術財団の資金提供を受けたプロジェクトによって実現した。インド陸軍南部軍司令部が試験用光ファイバー網の計画と設計に協力し、インドのラジャスタン州の区間で信号部隊がネットワークへの選択的アクセスを可能にした。複数のノードが配置され、そのうち2カ所が信頼ノードとして機能し、500kmを超えるルートでの量子鍵交換を実現した。
この成果は、インドにおける量子セキュア通信の進歩における重要なマイルストーンであり、量子技術分野で世界の先導的地位を目指す政府方針に沿うものだ。量子セキュア通信は、将来の量子計算による解読リスクに対抗する重要技術として期待されており、今回の実証は国内の量子技術産業、研究、防衛を結ぶ協働体制(STRIDE)の象徴的な成果とされる。
また、QNu Labs社が開発した量子乱数生成技術QSIPも紹介され、ESTIC 2025において科学技術相から首相に贈呈された。QSIPは暗号処理に必要な高品質な乱数を量子力学に基づき生成するもので、サイバー攻撃や量子攻撃に対する強固な防御に貢献する。

量子Suraksha Kavach装置の新型ラックを公開

QSKラックに設置された量子鍵配送システム
(出典:いずれもPIB)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部