インド理科大学院(IISc)は11月4日、疎水性粒子で覆われた液滴「リキッドマーブル(LM)」を用いて、農薬散布時の葉面への付着効率を高める新手法を開発したと発表した。研究成果は学術誌Journal of Colloid and Interface Scienceに掲載された。
植物の葉は疎水性が高く、散布した農薬の水滴が滑り落ちたり跳ね返ったりするため、約50%が無駄になるとされる。本研究は、LMが通常の水滴より跳ね返りにくいという過去の観察結果を出発点としている。LMは疎水性粒子に覆われた微小液滴で、もともと化学反応の小型容器として使われてきた技術である。
研究チームは、テフロンやPDMSで作成した疎水性基板に加え、植物の柔軟性を模倣するためステンレス鋼カンチレバーにも疎水性コーティングを施した。LM生成は一般的に疎水性ガラスビーズとテフロンでコーティングして行われるが、これらは植物にとって有害なため、生分解性の有機的な代替粒子が検討された。生分解性のリコポジウムやトウモロコシ由来のタンパク質ゼインを粒子として使用したところ、従来のガラスビーズより高い付着効率を示した。バラの葉への付着試験でも有効性が確認された。
LMは衝突時に広がってから後退する過程で粒子同士が衝突し、多くのエネルギーを失う。このため内部の液滴が跳ね返るだけの運動エネルギーを回復できず、表面に留まるという特殊な沈着メカニズムを示す。
研究を率いたプロセンジット・セン(Prosenjit Sen)准教授は「今後はコスト低減と大量のLMを生成する仕組みが必要です」と述べ、農薬散布や疎水性材料への印刷など応用範囲の拡大に期待を示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部