インド科学技術省(MoST)は11月12日、国家量子ミッション(NQM)の下でインド工科大学ボンベイ校(IIT-B)の研究チームがインド初の国産の量子ダイヤモンド顕微鏡(QDM)を開発したと発表した。

(出典:PIB)
本成果は、新興科学技術イノベーション会議(ESTIC 2025)に合わせて公表されたものであり、量子センシング分野における同国初の特許取得につながる技術とされる。開発を行ったのは、カストゥリ・サハ(Kasturi Saha)教授が率いるP-Questグループで、ダイヤモンド中の窒素空孔(NV)中心を用いた磁場可視化手法を基盤としている。
NV中心は、空孔の隣に窒素原子が位置する原子スケールの欠陥で、室温でも量子コヒーレンスを維持する特性を持つ。磁気・電気・熱の変化に高感度で反応し、スピン依存蛍光を光検出磁気共鳴(ODMR)で読み取ることで局所磁場を光学的に観測できる。同グループは、NV密度の高い薄膜ダイヤモンド層を設計することで、動的磁場の広視野イメージングを可能とした。
MoSTによると、QDMは神経科学や材料研究など複数分野での活用が想定されている。また、3Dチップアーキテクチャが普及する先端電子機器分野では、封止材の下にある電流経路や多層構造を従来手法で把握することが難しく、QDMは半導体チップの非破壊評価にも寄与する技術として位置づけられている。
発表には、ジテンドラ・シン(Jitendra Singh)科学技術相、アジェイ・K・スード(Ajay K. Sood)首席科学顧問、アバイ・カランディカール(Abhay Karandikar)DST長官らが出席した。研究チームは、QDMと人工知能(AI)や機械学習を組み合わせた計算イメージングの統合を進め、3次元磁場の可視化に基づく技術開発を目指している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部